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失敗しない豊胸サイズの決め方|3Dシミュレーションと希望の伝え方

失敗しない豊胸サイズの決め方|3Dシミュレーションと希望の伝え方

豊胸手術において「失敗しないサイズ」とは、単にボリュームを大きくすることではありません。自身の骨格や皮膚の伸びしろと調和し、長期間にわたり美しいシルエットを維持できるサイズを選定することに本質があります。

自身の理想と医学的な限界値のギャップを埋めるためには、3Dシミュレーション技術を活用した客観的な数値分析が重要です。さらに、医師への具体的かつ感覚的なイメージ共有も欠かせません。

後悔しないサイズ決定のための具体的な指標と、カウンセリング時に役立つ実践的な知識を網羅的に解説します。

目次

この記事を書いた人

アリエルバストクリニック 院長 石塚 紀行

石塚 紀行
ARIEL .BUST.CLINIC 院長
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資格・所属

  • 日本形成外科学会専門医
  • コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
  • VASER Lipo認定医
  • Juvederm Vista 認定医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
  • 日本形成外科学会所属
  • 日本美容外科学会(JSAPS)所属

【略歴】
ご自身の脂肪を活用した「自然な豊胸術」や、美しいボディラインを作る脂肪吸引を専門とする形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINICを開院。

ARIEL .BUST.CLINICは、ご自身の脂肪を活用した豊胸術(脂肪注入)を得意とする名古屋のクリニックです。それぞれの体型やご希望に応じた専門的なご提案をしており、脂肪採取(脂肪吸引)から繊細な注入、傷跡のケアに至るまで、形成外科専門医としての知識と技術を評価いただき、全国から患者様にお越しいただいています。

豊胸手術を含むボディメイクは、決して焦る必要のないものです。このサイトでは専門医の視点から、脂肪豊胸に関する正しい知識やメリット・デメリットを執筆しています。すぐに施術を決めることはせず、まずはじっくりと知識を深めた上で、ご自身が心から信頼できるクリニックへ相談されるようにしてください。

体型バランスと骨格から導き出す適正サイズの基準

美しいバストラインを実現するために最も重要なのは、希望するカップ数ではなく、自身の体型バランスです。特に胸郭の幅(Base Width)と乳房の直径が適合しているかどうかの確認が欠かせません。

無理なサイズアップは不自然な段差や皮膚トラブルの原因となります。まずは自身の身体的数値を正確に把握し、その範囲内で最大限の美しさを引き出すサイズを選定することが成功への近道です。

胸郭幅(Base Width)とバッグ直径の適合性

シリコンバッグにはそれぞれ決まった「直径」が存在します。この直径が患者様の胸郭の幅(デコルテの幅や乳房の底面の幅)を超えてしまうと、不自然に外側に張り出したり、谷間がくっつきすぎてしまったりする現象が起きます。

自然な仕上がりを求める場合、自身の乳房の底面幅(BW)よりもわずかに小さい、あるいは同等の直径を持つバッグを選ぶことが基本です。

医師はノギスなどの計測機器を用いて正確な数値を測りますが、自身の体格が華奢である場合は注意が必要です。選べるバッグのサイズに物理的な上限があることを理解しておきましょう。

無理に幅の広いバッグを入れると、脇の下にバッグの縁が触れて違和感を生じやすくなります。さらに、皮膚が過度に引き伸ばされて薄くなるリスクも高まります。

皮膚の厚みと伸展性が描く限界線

バストの皮膚がどれくらい伸びるか(伸展性)と、皮下脂肪や乳腺を含めた皮膚の厚みは、挿入可能なサイズを決定づける大きな要因です。

皮膚に十分な余裕があり厚みがある場合は、比較的大きなサイズのバッグを入れてもバッグの縁が目立ちにくくなります。触り心地も自然になりやすい傾向があります。

一方で、授乳経験がなく皮膚がタイトな方や、極端に痩せていて皮膚が薄い方の場合は注意が必要です。大きなバッグを入れると皮膚が張り詰めてしまい、「リップリング」と呼ばれる波打ち現象が表面に現れる可能性が高まります。

皮膚をつまんで厚みを測るピンチテストの結果に基づき、バッグが透けて見えない安全圏内のサイズを見極めることが大切です。

体格タイプ別推奨サイズ傾向

体格タイプ特徴サイズ選定のポイント
痩せ型・華奢胸郭が狭く皮膚が薄い横幅の狭いタイプを選び、皮膚への負担を最小限に抑えることが重要です。
普通・中肉中背適度な皮下脂肪がある選択肢が広く、ボリューム重視か形重視かを選びやすい傾向にあります。
大柄・骨太胸郭が広く骨格がしっかりしている大きめのサイズでも自然に馴染みやすく、ダイナミックな変化を出しやすいです。

身長とヒップラインとの黄金比

バスト単体を見るのではなく、全身を鏡に映した際のトータルバランスを重視することで、洗練されたスタイルが完成します。

一般的に、ヒップの周径とバストのトップ周径が近い数値であると、砂時計型の理想的なプロポーションに見えやすいと言われています。 身長が高い方は、多少大きなバッグを入れても縦のラインが長いため馴染みやすいでしょう。

しかし、小柄な方が過度なサイズアップを行うと、上半身だけが重く見えてしまい、太って見える原因にもなりかねません。 ウエストのくびれを強調したいのか、あるいは全体的にふくよかな印象にしたいのかによって、目指すべきボリューム感は異なります。

カップ数という数字の罠と視覚的なプロジェクション

「Cカップにしたい」「2カップ上げたい」という希望は具体的でわかりやすい指標に見えます。しかし、実際にはブラジャーのメーカーやアンダーバストのサイズによってカップの容量は大きく異なるため、カップ数だけでサイズを決めるのは危険です。

目指すべきは「何カップになるか」というラベルではありません。横から見た時の高さ(プロジェクション)や、正面から見た時のバストトップの位置といった視覚的な美しさが重要です。

同じ200ccでも見え方が異なる理由

同じ200ccのシリコンバッグであっても、その形状(プロファイル)によって胸の形は全く別物になります。 底面が広く高さが低い「ロープロファイル」のバッグを選べば、緩やかな丘のような自然な胸になりますが、前に突き出す迫力は控えめになります。 逆に、底面を狭くして高さを出した「ハイプロファイル」や「ウルトラハイプロファイル」を選べば、同じ200ccでもツンと前に突き出た高さのあるバストを作ることが可能です。

プロファイルによる形状の違い

プロファイル形状の特徴視覚的効果
ロー/モデレート底面が広く高さが低いお椀型で自然な広がりがあり、なだらかな曲線を形成します。
ハイ底面が適度で高さがある前に出る高さが強調され、デコルテのボリュームが出やすいです。
ウルトラハイ底面が狭く高さが顕著最も高さが出ますが、やや人工的な丸みが強調される場合があります。

つまり、容量(cc)はあくまで体積を示すものであり、最終的な見た目のインパクトを決めるのはバッグの高さ設定であると認識することが必要です。

アンダーバストとカップ容量の相関関係

ブラジャーのカップサイズは、トップバストとアンダーバストの差で決まりますが、アンダーバストが65cmの人にとってのCカップと、75cmの人にとってのCカップでは、カップ自体の容積が異なります。

アンダーが大きい人ほど、1カップ上げるために必要なシリコンの容量(cc)は多くなります。 一般的に、日本人の平均的な体型では、約150ccから200ccの注入で1.5から2カップ程度のサイズアップが見込めるとされていますが、これはあくまで目安に過ぎません。

自身の現在の下着サイズを基準にするのではなく、「なりたいバストの見た目」を基準に容量を逆算するアプローチが求められます。

デコルテのふくらみとバストトップの位置

サイズアップを希望する多くの女性が求めているのは、単なる大きさよりも、削げてしまったデコルテ(鎖骨下)のふくらみであることが多々あります。 デコルテにボリュームが出ると、視覚効果でバスト全体が若々しく、大きく見えるためです。

しかし、あまりに大きなサイズを入れてトップの位置が下がってしまうと、重量感のある垂れた胸に見えてしまうリスクがあります。

適切なプロジェクションを持つバッグを選ぶことで、乳頭の位置を上向きに保ちつつ、デコルテから流れるような美しいラインを形成することが可能になります。

3Dシミュレーション技術が埋める理想と現実のギャップ

3Dシミュレーションは、自身の身体をスキャンして生成された3Dモデル上で、様々なサイズや種類のバッグを試着するように比較検討できる技術です。 術後の仕上がりイメージを具体化し、医師との認識のズレを防ぐために極めて有効な手段となります。

頭の中で描いている漠然とした理想像を可視化することで、「思ったより大きすぎる」「意外と小さい」といった感覚的な気づきを得ることができます。その結果、納得感のあるサイズ決定が可能になります。

数値だけではわからない立体感の確認

カタログ上の「300cc」という数字を見ても、それが自分の体に収まった時にどのような立体感を生むのかを想像することは困難です。 3Dシミュレーションでは、あらゆる角度から自身のバストを確認することができます。

正面からのバランスだけでなく、横から見た時の高さ、斜めから見た時の谷間の深さ、下から見た時の丸みなど、多角的な視点でチェックしましょう。実際の生活シーンでの見え方に近いイメージを持つことができます。

特に、服を着た時のシルエットを疑似的に確認できる機能を持つシミュレーターもあり、日常生活への影響を考慮したサイズ選びに役立ちます。

シミュレーション活用における確認事項

確認項目チェックポイント目的
多角的な視点横、斜め、上からの見え方自分視点と他人視点の両方で違和感がないかを確認します。
左右差の補正左右で異なるサイズの適用左右のボリューム差を埋め、均整の取れたバストを目指します。
サイズ比較複数パターンの並列表示20cc刻みでの変化を見比べ、自身の許容範囲を特定します。

左右差の調整とアシンメトリーへの対応

人間の体は完全に左右対称ではなく、元のバストサイズや乳頭の位置、胸郭の形状に左右差があることが一般的です。

3Dシミュレーションを用いることで、左右のバストの容積差(cc)を正確に計測し、左右で異なるサイズのバッグを入れることでバランスを整えるプランを立てることができます。

例えば、右胸が左胸より20cc分小さい場合、右に少し大きめのバッグを選択して見た目の大きさを揃えるといった微調整も可能です。シミュレーション画面上で即座に変更を行い、その結果を確認できる点は大きなメリットです。

シミュレーションの限界と誤差の理解

非常に精度の高い3Dシミュレーションですが、あくまでコンピューター上の予測画像であり、実際の皮膚の硬さや筋肉の厚み、重力によるたわみまでを100%完璧に再現できるわけではありません。

シミュレーション画像は「形状の傾向」や「サイズ感の比較」をするための強力なツールですが、実際の手術では生体組織の反応が関わってきます。

そのため、シミュレーション結果を絶対的な完成予想図として捉えるのではなく、方向性を決めるための羅針盤として活用しましょう。最終的な微調整は医師の経験と技術に委ねる柔軟な姿勢を持つことも大切です。

医師への希望伝達における具体的アプローチ

医師とのカウンセリングにおいて「大きくしたい」「自然にしたい」といった抽象的な言葉だけでは、医師が描くイメージと患者様が描くイメージに乖離が生じる可能性があります。

自身の理想を正確に医師に共有するためには、視覚的な資料を用意することが効果的です。 加えて、なりたくない状態を明確に伝える「消去法」のアプローチや、ライフスタイルに基づいた具体的な要望を言語化する準備が必要です。

視覚資料の適切な選び方と提示方法

「百聞は一見に如かず」の通り、理想とするバストの写真を持参することは非常に有効です。 ただし、モデルの骨格や体型が自分とあまりにもかけ離れている場合、参考資料として機能しないことがあります。

自分と体型が似ている症例写真やモデルの写真を探し、「この写真のここが好き」というポイントを明確にして提示することが重要です。

例えば、「谷間の形がY字ではなくI字になっているところが好き」「デコルテのラインが直線的ではなく、ふっくらしているところが好き」など、具体的な部位を指し示しながら説明しましょう。医師はどのタイプのバッグや術式を選ぶべきか判断しやすくなります。

質感や揺れ感に関する言語化

サイズや形だけでなく、触り心地や動きに対する要望も伝える必要があります。 「柔らかさを最優先したい」のか、それとも「形が崩れないハリを重視したい」のかによって、推奨されるバッグの種類は変わります。

スポーツを頻繁にする方であれば、激しい動きでも不自然に見えないバッグや挿入位置を相談する必要があります。

また、仰向けになった時に胸が横に流れる自然さを求めるのか、ある程度高さが維持されることを好むのかも伝えましょう。動的なシチュエーションでの希望を共有しておくと、より満足度の高い結果につながります。

カウンセリング準備リスト

  • 自分と体格が似ている理想のバスト写真を用意する。
  • 絶対に避けたい形状や状態(NG例)を箇条書きにする。
  • 普段着用する服の傾向や、水着を着る頻度を伝える。
  • 仕事や趣味(スポーツ等)への影響を考慮したサイズか確認する。
  • ダウンタイムの許容期間と、誰にもバレたくないか等を伝える。

「なりたくない状態」の共有

「理想」を伝えるのが難しい場合は、「これだけは避けたい」というNG例を伝えることも効果的です。 「お椀を乗せたような不自然な境界線ができるのは嫌だ」「谷間が広すぎて離れ乳に見えるのは避けたい」といった拒絶条件を明確にしてください。

また、「大きすぎて太って見えるのは困る」といった懸念も重要です。これにより、医師は避けるべきリスク要因を把握し、選択肢を絞り込むことができます。

失敗を防ぐためには、ポジティブな希望と同じくらい、ネガティブな懸念点を共有しておくことが安全策となります。

シリコンバッグの種類と特性によるボリュームへの影響

シリコンバッグの進化は目覚ましく、現在では様々なメーカーから多様な特性を持つ製品が登場しています。 それぞれのバッグには、形状記憶能力の高さ、充填率の違い、表面のテクスチャー(質感)による特徴があり、これらはバストのサイズ感や最終的な仕上がりのシルエットに直結します。

自身の体質や求めるバスト像に合致した機能を持つバッグを選定することが、理想のサイズを実現するための鍵となります。

ラウンド型とアナトミカル型の決定的な違い

バッグの形状は大きく分けて、全体が均一に丸い「ラウンド型」と、しずくのような形をした「アナトミカル型(ティアドロップ型)」の2種類があります。

ラウンド型はデコルテ部分にもボリュームが出やすく、全体的にリフトアップされた若々しい印象を作り出すのに適しています。

主なバッグ形状と適応タイプ

形状タイプボリュームの出方向いている希望
ラウンド型全体的に丸く、上部にも高さが出るデコルテの削げを埋めたい、リフトアップ効果が欲しい
アナトミカル型下部に重心があり、なだらかバレたくない、生まれつきのような自然な曲線を好む
エルゴノミクス型姿勢により丸型からしずく型へ変化動いた時の自然さを重視、寝た時と起きた時の変化が欲しい

一方、アナトミカル型は下部にボリュームが集中しており、人間の自然な乳房の形状に近いため、立ち姿が非常にナチュラルになります。 サイズを決める際は、単に容量だけでなく、ボリュームを胸のどの部分(上部か下部か)に持ってきたいかによって、適した形状が変わってきます。

ジェルの充填率とコヒーシブシリコン

バッグ内部に充填されているジェルの凝集性(コヒーシブネス)や充填率(フィリングレート)も、サイズ感と触感に影響します。 充填率が100%に近いバッグは、表面にシワができにくく(リップリングのリスク低減)、ハリのある形状を保ちますが、触り心地はやや弾力が強くなります。 逆に充填率をあえて抑えたバッグや、柔らかいジェルを使用したバッグは、触り心地は非常に自然ですが、重力に従って形が変わりやすい特徴があります。サイズによっては上部のボリュームが少し物足りなく感じる場合もあります。

近年では、重力に応じて形が変わるエルゴノミクス(人間工学)に基づいたバッグも登場しており、姿勢に合わせて自然なサイズ感を演出できる選択肢が増えています。

表面性状がもたらすカプセル拘縮への影響

バッグの表面には、ツルツルした「スムースタイプ」と、ザラザラした「テクスチャードタイプ」、そしてその中間の「マイクロテクスチャード(ナノテクスチャード)」などがあります。 表面の加工は、体内でバッグが動かないように癒着させるか、あるいは被膜(カプセル)が厚くなるのを防ぐかといった目的で設計されています。

被膜が厚くなり硬くなる「カプセル拘縮」が起きると、バストが硬くなり、見た目のサイズも縮こまって小さく見えてしまうことがあります。 長期的に柔らかいサイズ感を維持するためには、拘縮リスクの低い表面加工が施されたバッグを選ぶことが重要視されています。

術式の選択と挿入層が制限するサイズの上限

どの場所にシリコンバッグを挿入するかという「挿入層」の選択は、安全に挿入できるバッグのサイズ上限を左右する重要な要素です。 乳腺の下に入れるのか、大胸筋の下に入れるのかによって、皮膚へのテンションのかかり方や、バッグの縁の隠れやすさが異なります。

自身の元のバスト組織の厚みに応じて適切な層を選択しなければ、無理なサイズアップは術後のトラブルに直結するため、慎重な判断が必要です。

乳腺下法と大胸筋下法のサイズ許容度

乳腺の下にバッグを入れる「乳腺下法」は、バッグの動きが制限されにくく、柔らかいバストを作りやすい方法です。しかし、皮膚と乳腺が薄い場合に大きなバッグを入れると、バッグの形が浮き出てしまうリスクがあります。

一方、大胸筋の下にバッグを入れる「大胸筋下法」は、筋肉がクッションとなってバッグを覆うため、痩せ型の人でもバッグの縁が目立ちにくい特徴があります。比較的大きなサイズを入れても自然な見た目を維持しやすいメリットがあります。

ただし、筋肉の圧力がかかるため、術後の痛みが出やすかったり、バッグが外側に押し出されようとする力が働くことがあります。 近年では、上部を筋肉の下、下部を筋膜の下などで覆う「デュアルプレーン法」など、それぞれの利点を組み合わせた手法も用いられています。

身体的制約チェックリスト

  • 元の乳腺組織の厚みが2cm未満の場合、乳腺下法での大幅なサイズアップは慎重に行う必要がある。
  • 大胸筋が発達している場合、筋肉下に入れるとバッグが圧迫され変形する可能性がある。
  • 漏斗胸や鳩胸など、胸郭の変形がある場合は、特注のバッグや特殊な配置が必要になることがある。
  • 過去に授乳で皮膚が伸びている場合は、あえて大きめのサイズで皮膚を張り直す手法が取られることもある。
  • 切開創の治癒力を考慮し、過度なテンションがかかる巨大サイズは傷跡が広がるリスクがある。

脂肪注入併用(ハイブリッド豊胸)の選択肢

シリコンバッグ単独では不自然になりそうな場合、自身の脂肪を採取してバッグの周りに注入する「ハイブリッド豊胸」という選択肢があります。 この方法では、バッグの縁を脂肪でカモフラージュできるため、本来の皮膚の厚みだけでは難しかったサイズアップが可能になるケースがあります。

また、谷間やデコルテといったバッグだけでは形成しにくい部分に脂肪を足すことで、より完成度の高いシルエットを作ることができます。 サイズと自然さの両方を妥協したくない場合、この複合手術が解決策となることがあります。

切開部位によるバッグサイズの制約

バッグを挿入するための入り口(切開部位)も、入れられるバッグの大きさに影響を与えることがあります。 一般的に「脇の下」「乳房下溝(アンダーバスト)」「乳輪」などが切開部位として選ばれます。

脇の下からのアプローチは傷跡が目立ちにくいですが、距離があるため非常に大きなバッグや硬めのバッグを挿入する難易度が高くなる場合があります。 アンダーバスト切開は、バッグが入るスペースを直接視認しやすく、大きなサイズや形状の安定性が求められるアナトミカル型バッグを正確に配置するのに適しています。

希望するサイズが極端に大きい場合は、医師から切開部位の変更を提案されることもあります。

サイズ選定におけるリスク回避と長期的視点

豊胸手術は一度行えば終わりではなく、長い人生をそのバストと共に過ごすことになります。 一時的な感情で「とにかく大きく」と決めてしまうと、数年後に加齢による変化やライフスタイルの変化によって、大きすぎるバストが重荷になるリスクが生じます。

また、メンテナンスが必要になる可能性も考慮しなければなりません。将来的なリスクを見据え、「今」だけでなく「10年後」も美しいと思えるサイズを選ぶ冷静な視点を持つことが、後悔のない選択につながります。

過度なサイズアップが招く「リップリング」

体格に対して大きすぎるバッグを入れた際の代表的なトラブルが「リップリング」です。 これは、バッグが体内で折れ曲がったり波打ったりした形状が、皮膚の表面にそのまま浮き出てしまう現象です。

特に、バストの外側や下側で触れると波打ちを感じることが多く、見た目の美しさを著しく損ないます。 一度リップリングが起きると、脂肪注入でカバーするなどの修正が必要になります。

ご自身の組織の厚みでカバーできる限界を超えないサイズに留めることが、滑らかなバストラインを保つための防波堤となります。

リスクとサイズの相関関係

リスク要因サイズ過多の場合サイズ控えめの場合
皮膚トラブル皮膚が薄くなり、ストレッチマーク(肉割れ)ができやすい皮膚への負荷が少なく、長期的な質感を保ちやすい
下垂リスク重力の影響を強く受け、早期に下垂する可能性がある自前の組織の支持力で形状を維持しやすい
触り心地皮膚が張り詰め、バッグの硬さを感じやすい皮下組織の柔らかさを損なわず、自然な感触に近い

術後の腫れと完成サイズの誤差

手術直後は麻酔液の影響や組織の炎症による腫れが生じているため、本来の仕上がりよりもバストが一回り大きく、パンパンに張った状態になります。

「手術直後の大きさが気に入っていたのに、腫れが引いたら小さくなってしまった」とがっかりするケースもあれば、逆に「腫れている状態を見て大きすぎたと不安になったが、落ち着いたら丁度良くなった」というケースもあります。

サイズを決める際は、この「腫れが引いた後の最終的なサイズ(約3〜6ヶ月後)」を想定して決定する必要があります。医師はそれを計算に入れた上で提案を行っています。

加齢と体重変動の影響

シリコンバッグ自体は変化しませんが、それを覆っているご自身の体は加齢とともに変化します。 皮膚の弾力が低下してくると、重いバッグを支えきれずにバスト全体が下垂するスピードが早まる可能性があります。

また、大幅なダイエットで皮下脂肪が減ると、バッグの輪郭が浮き出てくることもあります。 逆に中年太りなどで体重が増加すると、想定以上にバストが巨大化して見えることもあります。

将来の妊娠・出産・授乳の可能性や、年齢による皮膚のたるみリスクを考慮し、体に負担をかけすぎない「程よいサイズ」を選ぶことが、長く美しいバストを維持する秘訣です。

よくある質問

最後に、サイズ選びやシミュレーションに関して、患者様から多く寄せられる疑問について回答します。不安を解消し、クリアな状態でカウンセリングに臨むための一助としてください。

皮膚がとても硬くて伸びにくいのですが、希望のサイズを入れることはできますか?

皮膚の伸展性が低い場合、一度の手術で極端に大きなサイズを入れることは推奨されません。無理に入れると傷口が開いたり、痛みが強く出たりするリスクがあるためです。

どうしても大きなサイズを希望される場合は、皮膚を徐々に伸ばすティッシュエキスパンダーという拡張器を使用する段階的な手術や、少し小さめのサイズで一度手術を行い、数年後に皮膚が伸びてからサイズアップの入れ替えを行う方法などが検討されます。

3Dシミュレーションの画像と実際の手術結果は完全に一致しますか?

完全に一致するわけではありません。シミュレーションはあくまでコンピューター上の計算に基づく予測画像であり、実際の皮膚の質感、筋肉の動き、重力による微妙な変化までは100%再現できないためです。

しかし、サイズ感の比較やイメージの共有ツールとしては非常に優秀であり、大きな方向性のズレを防ぐためには不可欠な工程と言えます。参考値として捉え、医師の臨床経験によるアドバイスと合わせて判断することが重要です。

寝た時に不自然にお椀型に盛り上がったままになりませんか?

使用するバッグの種類と挿入する層によって異なります。

形状記憶力の強い高充填のラウンド型バッグを筋肉の上に挿入した場合、仰向けになっても高さが維持されやすく、やや人工的に見えることがあります。

一方、エルゴノミクスタイプのバッグや、重力に従って動く柔らかいジェルを採用したバッグを選び、適切な層に挿入することで、寝た時には自然に横に流れるような動きを再現することが可能です。

カウンセリング当日はどのような服装で行くべきですか?

体のラインがわかりやすい服装、あるいは普段よく着るテイストの服で行くことをお勧めします。医師が普段のファッションの雰囲気を見ることで、そのスタイルに似合うバストサイズをイメージしやすくなるためです。

また、3Dシミュレーションの撮影を行う場合は上半身裸になる必要がありますので、着脱しやすい前開きの服などがスムーズです。試着用のサイザー(疑似バッグ)をブラジャーの中に入れて服を着た時のシルエットを確認することもあります。

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