額の脂肪注入は痛い?静脈麻酔とブロック麻酔の選び方と術後の痛み止め

額への脂肪注入を検討する際、多くの方が最も心配するのは「手術中の痛み」と「術後のダウンタイム中の痛み」ではないでしょうか。

顔の印象を大きく変える魅力的な施術ですが、顔面への注射に対する恐怖心は誰しもが持つものです。

結論からお伝えすると、適切な麻酔計画と事前の疼痛コントロールを行えば、痛みは十分に管理可能です。静脈麻酔で眠っている間に終える方法や、局所的なブロック麻酔でコストを抑える方法など、選択肢は複数あります。

この記事では、痛みの感じ方には個人差があることを踏まえつつ、あなたに合った麻酔の選び方と、術後の痛みを最小限に抑えるための具体的な対策を詳しく解説します。

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この記事を書いた人

アリエルバストクリニック 院長 石塚 紀行

石塚 紀行
ARIEL .BUST.CLINIC 院長
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資格・所属

  • 日本形成外科学会専門医
  • コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
  • VASER Lipo認定医
  • Juvederm Vista 認定医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
  • 日本形成外科学会所属
  • 日本美容外科学会(JSAPS)所属

【略歴】
ご自身の脂肪を活用した豊胸術や顔・お尻などへの脂肪注入、そして脂肪吸引によるボディメイクを専門とする形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINICを開院。

ARIEL .BUST.CLINICは、ご自身の脂肪を活用した脂肪注入(豊胸・顔・お尻など)を得意とする名古屋のクリニックです。それぞれの体型や悩みに応じた専門性を活かしたご提案をしており、脂肪採取(脂肪吸引)から注入、傷跡や傷のケアに至るまで、形成外科専門医としての知識と技術を評価いただき、全国から患者様にお越しいただいています。

ボディメイクは決して焦る必要のないものです。このサイトでは脂肪注入に関連する多くの記事を書いていますので、すぐに施術を決めることはせず、まずはぜひ患者様自身で知識をつけた上でご希望のクリニックへ相談されるようにしてください。

額への脂肪注入の手術中と術後に感じる「痛みの正体」

額への脂肪注入における痛みは、「手術中の痛み」と「術後の痛み」の2つに分けて考える必要があります。多くの方がイメージする「針が刺さる痛み」は、麻酔が効いていれば感じることはありません。

むしろ、術中に意識がある場合に感じるのは、皮膚の下で何かが動いているような違和感や、組織が押されるような圧迫感です。これらは鋭利な痛みではありませんが、不快に感じる方もいます。

カニューレが入る時の独特な圧迫感とは

手術では、まず麻酔液を注入し、その後に脂肪を注入します。この時、先端が丸い「カニューレ」という器具を使用するため、組織を鋭く切るような鋭利な痛みは生じません。

しかし、額の皮膚は他の部位に比べて硬く、骨膜(骨を覆う膜)と皮膚の間のスペースが狭いのが特徴です。

そのため、脂肪が入ってくる際に「メリメリ」とした音や、「ググッ」と押される強い圧迫感を感じる場合があります。

これは痛みというよりも、重苦しい感覚に近いものです。静脈麻酔を使用しない場合は、この独特な感覚が恐怖心につながり、それを「痛み」として脳が認識してしまうケースが少なくありません。

局所麻酔を打つ一瞬のチクリとした痛み

手術工程の中で、唯一鋭い痛みを感じる可能性があるのが、最初の局所麻酔を打つ瞬間です。額の神経ブロックや、カニューレを挿入するための入り口(刺入点)に麻酔をする際、極細の針を使用します。

針自体は細いのですが、薬液が体内に入るときに「しみるような痛み」や「熱い感覚」を伴います。

特に眉毛の内側にある滑車上神経や、眉の中央付近にある眼窩上神経へのブロック麻酔は、確実に神経の近くに薬液を届ける必要があります。

そのため、一瞬ズーンとした重い痛みが走る場合があります。この最初の数分間さえ乗り切れば、その後の脂肪注入操作自体で鋭い痛みを感じることはほぼありません。

脂肪採取部位(太もも・お腹)の筋肉痛に似た感覚

額のことばかり気にしがちですが、忘れてはならないのが脂肪を採取する部位(ドナー部)の痛みです。

一般的に太ももやお腹から脂肪を吸引しますが、術後は額よりもドナー部の痛みを強く訴える患者様が多い傾向にあります。

これは、広範囲にわたって皮下脂肪を吸引するため、組織へのダメージが額よりも広いためです。感覚としては、激しい運動をした翌日の強い筋肉痛や、打撲をした時の痛みに似ています。

歩くたびに太ももが響く、座るときに太ももの裏が痛むといった動作時の痛みが特徴で、これらは通常1週間程度で落ち着いていきます。

痛みや感覚の発生タイミングと特徴

タイミング・部位主な感覚・痛みの種類痛みの持続期間・特徴
麻酔注入時(額)針が刺さる鋭い痛み、薬液が広がる浸透痛、神経に触れるような放散痛数秒から数分。手術工程の中で最も鋭い痛みを感じる瞬間です。
脂肪注入中(額)おでこ全体が押される圧迫感、皮膚が引っ張られる感覚、内部での異物感注入操作中のみ持続。鋭い痛みではなく、重苦しい不快感が主となります。
術後(額)帽子をきつく被ったような締め付け感、触れた時の鈍痛、腫れによる張り術後当日から翌日がピーク。3日目以降は急速に軽快します。
術後(採取部)強い筋肉痛、打ち身のような痛み、動かした時の引きつり感術後3日〜1週間がピーク。額よりも痛みが長引く傾向にあります。

眠っている間に終わる静脈麻酔はおすすめ?

痛みが不安な方にとって、最も強力な味方となるのが「静脈麻酔(セデーション)」です。これは点滴から鎮静剤を投与し、手術中は半分眠ったようなウトウトした状態にする方法です。

完全に意識がなくなる全身麻酔とは異なり、自発呼吸は保たれたまま、呼びかけられれば反応できる程度の深さが一般的です。

額の脂肪注入においては、手術中の恐怖心や不快な記憶をなくせるため、第一選択として推奨されるケースが多い麻酔法です。

手術中の怖い記憶がほとんど残らない

静脈麻酔の最大のメリットは「健忘効果」です。実際には医師の指示に従って体の向きを変えたり目を開けたりしていても、術後に目が覚めると手術中の記憶がほとんど残っていません。

「気づいたら終わっていた」という感覚になるため、手術に対する恐怖心が強い方や、先端恐怖症の方にとっては精神的な負担を大幅に軽減できます。

額への脂肪注入は、顔の近くで器具が行き来するため、視覚的な恐怖を感じやすい手術です。静脈麻酔であれば、そのストレスから完全に解放され、リラックスした状態で手術を受けられます。

体動を抑えて安全に美しい額を作る

患者様が痛みや恐怖で動いてしまうと、繊細な注入作業に支障が出ます。特に額は曲面であり、均一に脂肪を注入して滑らかな曲線を形成するには、高度な技術と患者様の安静が必要です。

静脈麻酔によってリラックスした状態を保つことができれば、不意な体動のリスクがなくなり、医師は注入層や量の微調整に集中できます。

結果として、より凸凹の少ない、美しい仕上がりにつながるのです。痛みのコントロールは、単に不快感を取り除くだけでなく、仕上がりのクオリティを高めるためにも欠かせない要素です。

麻酔後の気分の悪さと帰宅時の注意点

メリットの多い静脈麻酔ですが、体質によっては術後に吐き気やめまいを感じる場合があります。特に乗り物酔いしやすい方や、過去に麻酔で気分が悪くなった経験がある方は注意が必要です。

また、手術当日は車や自転車の運転が法律で禁止されているため、公共交通機関やタクシーでの帰宅、あるいは家族の送迎を確保する必要があります。

手術終了後も、麻酔が完全に抜けるまでリカバリールームで1〜2時間程度休憩を取る必要があり、トータルの滞在時間は長くなります。スケジュールには十分な余裕を持って臨むようにしましょう。

静脈麻酔を選択する際のチェックポイント

項目静脈麻酔における詳細内容
意識レベルウトウトと眠っている状態。深いリラックス効果があり、手術中の記憶はほぼ残りません。
痛みの感じ方鎮痛剤も併用するため、局所麻酔時の痛みも含めて、苦痛を感じることはほとんどありません。
帰宅時の制限判断能力や運動能力が低下するため、当日の運転は厳禁です。付き添いがあると安心です。
事前の準備手術の6時間前からの絶食、2時間前からの絶飲など、胃の内容物を空にする制限が必要です。

コスト重視でブロック麻酔のみを選ぶのはあり?

一方で、静脈麻酔を使わず、額の神経の根本に麻酔を効かせる「ブロック麻酔」と局所麻酔のみで手術を行うことも可能です。

この方法の最大のメリットは、コストを抑えられる、術後の回復が早い、といった点です。静脈麻酔のような絶食制限もなく、手術直後に歩いて帰宅できます。

しかし、意識がはっきりしている中で手術を受けることになるため、向き不向きがはっきりと分かれる選択肢でもあります。どのような人がこの方法に適しているのか、冷静に判断しましょう。

医師と会話しながらデザインを確認できる

意識があるということは、手術中に鏡を見て仕上がりを確認したり、医師と直接会話をして要望を伝えたりできるということです(ただし、注入直後は腫れがあるため完全な完成形ではありません)。

また、自分の体調変化をすぐに言葉で伝えられる安心感もあります。「痛い」と言えばすぐに追加の麻酔をお願いできるため、コミュニケーションを取りながら手術を進めたい方には適しています。

自分の額が変化していく様子をリアルタイムで確認したいという、美容医療の手技自体に興味がある方にとっては、興味深い体験になるかもしれません。

音や振動に対するストレス耐性は必要

局所麻酔のみの場合、痛みは感じなくても、触れられている感覚や音は鮮明に分かります。カニューレが皮下組織を通る時の音や、脂肪を採取する吸引器の振動などは、人によっては大きなストレスとなります。

特に額は頭蓋骨に近いため、骨を伝わって音が響きやすく、不快感が増幅されやすい部位です。歯科治療の音が苦手な方や、先端恐怖症の方は、局所麻酔のみでの手術は避けたほうが無難です。

逆に、「痛みさえなければ音や雰囲気は全く気にならない」というタフな方であれば、この方法は合理的かつ経済的な選択肢と言えるでしょう。

予算を抑えたい場合の選択肢として

多くのクリニックにおいて、静脈麻酔はオプション料金(数万円〜10万円程度)として設定されています。予算に限りがある場合、麻酔代を節約するために局所麻酔のみを選択する方もいらっしゃいます。

しかし、手術中の苦痛で体が動いてしまったり、血圧が上がって内出血が強くなったりしては本末転倒です。安易に費用だけで決めるのは危険です。

ご自身の性格や過去の歯科治療などでの経験を振り返り、ストレスに耐えられるかどうかを慎重に検討することが重要です。不安であれば、事前のカウンセリングで医師に相談してみましょう。

局所麻酔のみの手術に向いている人の特徴

  • 痛みに比較的強く、注射や歯科治療に対して過度な恐怖心がない方
  • 手術中の音や振動、押される感覚などを冷静に受け止められる方
  • 手術当日に車やバイクの運転をして帰宅する必要がある方
  • 術前の絶食や絶飲などの制限を守るのが難しい、あるいは負担に感じる方
  • 予算を少しでも抑えたいと考え、そのために多少の不快感は許容できる方
  • 麻酔薬によるアレルギーや、過去に気分の悪化などの副作用が出た経験がある方

痛みを遮断する「神経ブロック」の範囲と効果

額の手術で局所麻酔を効かせるために行われるのが「神経ブロック」です。これは、額の感覚を支配している特定の神経の根元に麻酔薬を注入し、そこから先の感覚を一時的に遮断する手技です。

単に皮膚に麻酔を打つだけでは、脂肪を注入する深い層まで十分に麻酔が効かないケースがあるため、このブロック麻酔の技術が非常に重要になります。

額の感覚がどのように麻痺し、どの程度の範囲までカバーされるのかを理解しておくと、手術中の安心感につながります。

眉周辺の神経へのアプローチ方法

額の感覚を支配している主な神経は、眉毛の中央付近から出る「眼窩上神経(がんかじょうしんけい)」と、眉毛の内側から出る「滑車上神経(かっしゃじょうしんけい)」です。

医師は解剖学的な位置を正確に把握し、これらの神経が出てくる骨の穴(孔)や切痕の近くに麻酔薬を注入します。

ここがしっかりとブロックされると、眉毛から髪の生え際、さらには頭頂部付近までの広い範囲の感覚が鈍くなります。この処置が適切に行われていれば、脂肪注入時の痛みは劇的に緩和されます。

麻酔が効くまでにかかる時間と持続時間

ブロック麻酔を行ってから効果が表れるまでには、通常5分〜10分程度のタイムラグがあります。麻酔薬が神経に浸透するのを待つ時間です。

効果が出てくると、額全体が重たく感じたり、触っても自分の皮膚ではないようなゴムのような感覚になったりします。

この麻酔の効果は、使用する薬剤の種類にもよりますが、通常2〜4時間程度持続します。手術が終わる頃まで十分に効いているため、術直後の痛みもカバーしてくれます。

こめかみなどカバーしきれない部位への対応

神経ブロックは非常に有効ですが、こめかみの外側や、髪の生え際のさらに奥側など、支配神経が異なる領域まではカバーしきれない場合があります。

特にこめかみへの注入も併せて行う場合は、別の神経(頬骨側頭神経など)の支配領域となるため、別途局所麻酔を追加する必要があります。

広範囲に脂肪注入を行う場合は、ブロック麻酔単独ですべての痛みを消すのは難しく、必要に応じて注入箇所ごとに局所麻酔を追加していく「浸潤麻酔」を併用することになります。

ブロック麻酔と浸潤麻酔の役割分担

麻酔の種類アプローチの方法期待できる効果と特徴
神経ブロック眉付近の神経の出口に集中的に麻酔薬を注入する。額全体から頭頂部にかけての広範囲の痛みを遮断する。深い層の痛みにも有効。
浸潤麻酔(局所)脂肪を注入する層やカニューレの刺入点に直接注入する。ブロック麻酔でカバーできない端の部分や、出血を抑える(血管収縮剤入り)目的で使用する。
静脈麻酔(併用時)点滴から全身に鎮静剤を巡らせる。ブロック麻酔を打つ時の痛みを消し、手術全体の不快感を取り除く。

脂肪採取部(太もも・お腹)の痛みを減らす工夫

額への注入にばかり気を取られがちですが、患者様が術後に最も苦労するのは、実は脂肪を採取した部位の痛みです。良質な脂肪を採取するためには、太ももの内側やお腹からある程度の量を吸引する必要があります。

この際に行われる麻酔方法と、術後の痛みを軽減するための工夫について解説します。採取部の痛みは歩行や着替えなどの日常生活に直結するため、事前の心構えと対策が大切です。

大量の麻酔液を撒くチュメセント法の効果

脂肪吸引を行う部分には、「チュメセント麻酔」と呼ばれる特殊な局所麻酔液を大量に注入します。これは、麻酔薬、止血剤、生理食塩水などをブレンドした液体です。

この液体を皮下脂肪層に充満させて層を膨らませると、脂肪を柔らかくして吸引しやすくすると同時に、血管を収縮させて出血を最小限に抑え、さらに広範囲の鎮痛効果を得られます。

この麻酔液を注入する際にも圧迫感を感じる場合がありますが、これによって吸引時の痛みはほとんど感じなくなります。

術後の筋肉痛には圧迫固定が一番効く

麻酔が切れた後、採取部には強い筋肉痛のような痛みが現れます。これは、脂肪がなくなったスペースに血液やリンパ液が溜まったり、剥離された組織が修復しようとして炎症を起こしたりするためです。

この痛みを和らげるために最も効果的なのが「圧迫固定」です。医療用のガードルや包帯で患部をしっかりと圧迫すると、組織の揺れを抑え、動いた時の痛みを軽減できます。

また、無駄な腫れや内出血を防ぐ効果もあるため、医師の指示通りに圧迫を続けることが、結果として痛みの期間を短くすることにつながります。

マッサージはいつから始めるべき?

術後早期は安静が必要ですが、痛みが落ち着いてきたら徐々に拘縮(こうしゅく:皮膚が硬くなる現象)を防ぐためのケアが必要になります。

しかし、痛みが強い時期に無理にマッサージをする必要はありません。

通常は術後1週間〜2週間経過し、痛みが違和感程度に変わってから開始します。痛みを我慢して無理に動かすよりも、初期は圧迫と安静を優先しましょう。

回復に合わせて徐々に日常生活の動作範囲を広げていくことが、長期的な痛みの管理としては正解です。

脂肪採取部の回復プロセスと痛み対策

  • 術後当日〜3日目:痛みのピークです。処方された痛み止めを服用し、ガードルでしっかり圧迫固定を続けます。トイレの際などの着脱時はゆっくり動くようにしましょう。
  • 術後4日目〜1週間:鋭い痛みから鈍い痛みへ変化します。内出血が重力で下がってくることがありますが、正常な反応です。無理のない範囲で歩行などの日常動作を行います。
  • 術後2週間〜1ヶ月:痛みはほとんど消失し、皮膚の硬さ(拘縮)やつっぱり感が現れます。入浴時などに優しくマッサージを開始し、皮膚の柔軟性を取り戻していきます。
  • 術後1ヶ月以降:違和感も消失し、完成に近づきます。色素沈着が残っている場合は保湿と紫外線対策を行いましょう。

術後の痛み止め(鎮痛剤)の効果的な飲み方

手術が終われば、あとは自宅での療養となります。ここで重要になるのが、処方された痛み止め(鎮痛剤)の適切な使用です。

「痛くなってから飲む」のではなく、痛みの波をコントロールするように服用すると、快適なダウンタイムを過ごせます。

クリニックから処方される薬の種類や、市販薬との併用、そして薬以外の方法で痛みを緩和するテクニックについてお伝えします。

痛みのピークが来る前に早めに飲む

美容外科で一般的に処方されるのは、ロキソニン(ロキソプロフェン)やボルタレン(ジクロフェナク)といったNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる種類の鎮痛剤です。

これらは痛みのもととなるプロスタグランジンの生成を抑え、炎症を鎮める効果があります。

特に術後当日の夜は麻酔が切れて痛みが強くなりやすいため、痛みを感じ始める前、あるいは「少し痛いかな」と感じた時点で早めに服用するのがおすすめです。

痛みがピークに達してからでは薬が効くまでに時間がかかり、辛い時間を過ごすことになってしまいます。

胃薬とセットで飲むことを忘れずに

鎮痛剤は効果が高い反面、胃粘膜を荒らす副作用があるため、通常は胃薬(ムコスタやセルベックスなど)と一緒に処方されます。必ずセットで服用するようにしてください。

また、一度服用したら、次の服用までには最低でも4〜6時間の間隔を空ける必要があります。もし処方薬だけでは痛みが治まらない場合でも、自己判断で倍量を飲んだり、間隔を詰めたりするのは危険です。

痛みが強すぎる場合は、薬の量ではなく、患部を冷やすなどの物理的な対処を併用するか、クリニックに相談することが大切です。

冷やすことによる鎮痛効果と注意点

薬以外の鎮痛方法として最も即効性があるのが「クーリング(冷却)」です。保冷剤をタオルで巻き額や脂肪採取部に当てて、血管を収縮させて炎症を抑え、神経の伝達を鈍らせて痛みを感じにくくします。

ただし、冷やしすぎは凍傷のリスクや血流不全による脂肪の定着率低下を招く恐れがあります。「15分冷やして休憩する」といったサイクルを守り、直接氷を当てないように注意してください。

特に額への脂肪注入の場合、過度な冷却は脂肪細胞の生存率に悪影響を与える可能性があるため、痛みが強い初期の数日間に留め、激しい冷却は避けるのが最近の定説です。

処方薬と術後ケアの正しい組み合わせ

対策・薬剤目的と効果注意点・推奨事項
鎮痛剤(内服)炎症物質の生成を抑え、全身的な痛みを緩和する。食後に胃薬と共に服用する。痛みの予兆を感じたら早めに飲むのがコツ。
抗生物質(内服)細菌感染を防ぎ、化膿による痛みや腫れの悪化を予防する。痛みがなくても、処方された分は必ず最後まで飲み切ることが重要。
クーリング患部の熱感を取り、神経を麻痺させて痛みを和らげる。冷やしすぎは脂肪の定着を妨げるため、術後3日間程度を目安に適度に行う。
頭を高くして寝る頭部に血液が溜まるのを防ぎ、ズキズキする拍動痛や腫れを軽減する。枕を高くするか、リクライニングを活用する。横向き寝は避ける。

これって異常?注意すべき痛みのサイン

術後の痛みはある程度想定内ですが、中には「通常の経過とは異なる危険な痛み」も存在します。これを見逃すと、感染症や血流障害などの合併症が悪化してしまう可能性があります。

どのような痛みが正常範囲内で、どのような痛みが警戒すべきサインなのかを知っておくことは、早期発見・早期治療のために非常に重要です。

自己判断せず、不安を感じたらすぐに執刀医に連絡できる体制を確認しておきましょう。

薬が効かないほどの激痛がある場合

通常、術後の痛みは処方された鎮痛剤を服用すれば治まる程度です。もし、薬を飲んでも全く痛みが引かない、あるいは夜も眠れないほどの激痛が続く場合は、何らかの異常が起きている可能性があります。

例えば、皮下で大きな出血(血腫)が起きて組織を圧迫している場合や、急激な細菌感染による炎症などが考えられます。

特に、痛みと共に急激な腫れや皮膚の変色が進行している場合は、緊急の処置が必要になるケースもあるため、躊躇せずクリニックへ連絡してください。

額の感覚異常や長引く神経痛

術後、額や頭皮に触れた感覚が鈍かったり、逆にピリピリとした電気が走るような痛みを感じたりする場合があります。

これは手術操作によって感覚神経が一時的にダメージを受けたことによる症状で、多くの場合は数週間から数ヶ月かけて徐々に回復していきます。

しかし、眉毛を動かせない(運動神経の麻痺)場合や、焼けるような痛みが長期間続くときは、神経への影響が強い可能性があります。

ビタミンB12製剤の服用などで回復を促す治療が必要になることもあるため、検診時に必ず医師に伝えましょう。

感染の可能性がある熱感と赤み

術後数日が経過してから、急に痛みが強くなり、患部が赤く腫れ上がって熱を持っている場合は、感染症の疑いがあります。

脂肪注入はご自身の組織を使うためアレルギー反応はありませんが、細菌が入り込むリスクはゼロではありません。感染を放置すると、せっかく注入した脂肪が壊死したり、膿が溜まったりしてしまいます。

この場合、抗生物質の点滴や洗浄処置が必要になります。「ただの腫れだろう」と放置せず、痛み・赤み・熱感の3セットが揃ったら要注意サインです。

正常な経過と注意すべき症状の比較

症状の種類正常な経過(心配不要)注意すべき異常サイン(要相談)
痛みの強さ当日から翌日がピークで、鎮痛剤でコントロール可能。日に日に軽くなる。鎮痛剤が効かない激痛。日が経つにつれて痛みが強くなる。
腫れ・赤み3日目頃まで強く出るが、徐々に黄色くなり引いていく。片側だけ異常に膨らむ、真っ赤に腫れて熱い、膿が出る。
感覚の変化皮膚表面の感覚が鈍い、触ると違和感がある。眉毛が動かない、目が閉じにくい、耐え難いビリビリした痛み。

よくある質問

額の脂肪注入後の腫れはいつまで続きますか?

個人差はありますが、強い腫れのピークは術後2日から3日目です。この時期は額だけでなく、重力によってまぶたや目の下までむくみが出る場合があり、一時的に目が開きにくくなる方もいます。

その後、1週間から2週間かけて大きな腫れは引き、メイクで隠せる程度になります。完全に馴染んで完成形となるまでには、約3ヶ月程度を見ておくのが一般的です。

大切な予定がある場合は、最低でも2週間以上の余裕を持って手術を受けることをお勧めします。

額の脂肪注入の定着率はどのくらいですか?

注入した脂肪がすべてその場に残るわけではなく、一部は体内に吸収されます。一般的に額への脂肪注入の定着率は50%から70%程度と言われています。

定着率は、採取した脂肪の純度を高める加工法(コンデンスリッチなど)や、注入技術、術後の過ごし方によっても変動します。

喫煙や術後の急激なダイエット、患部の圧迫などは定着率を下げる要因となるため注意が必要です。一度定着した脂肪は、自分の組織として半永久的に残ります。

額の脂肪注入で凸凹やしこりができる可能性はありますか?

技術的に未熟な注入や、一箇所に大量の脂肪を固めて注入した場合、凸凹や「しこり(石灰化)」が生じるリスクがあります。

これを防ぐためには、微細な脂肪の粒を、複数の層にまんべんなく分散させて注入する高度な技術が必要です。

万が一しこりができてしまった場合は、ステロイド注射で小さくしたり、場合によっては手術で除去したりすることになります。

リスクを最小限にするためには、症例経験が豊富な医師を選ぶことが最も重要です。

額の脂肪注入は2回目の手術が必要ですか?

1回の手術でも十分な変化を実感できる方が多いですが、より丸みを出したい場合や、定着具合を見てボリュームが物足りないと感じる場合は、2回目の注入を行うことがあります。

2回目を行う場合は、1回目の脂肪が完全に定着し、組織が安定する術後3ヶ月から半年以降に行うのが理想的です。

最初から2回注入する前提で計画を立てる方もいれば、1回で満足される方もおり、ご自身の理想とする額の高さや丸みによって判断が分かれます。

参考文献

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