ナノリッチとは?コンデンスリッチとの違いと、目の下のクマや肌質改善への効果

鏡を見るたびに目の下の影や小ジワが気になり、高価なアイクリームを試しても変化を感じられないという経験はありませんか。

年齢とともに現れる目元の悩みは、単なる皮膚のたるみだけでなく、内側の組織の変化が大きく関係しています。

近年、ご自身の脂肪を活用して自然な若返りを目指す美容医療が注目を集めています。

その中でも「ナノリッチ」は、繊細な目元の皮膚に適した滑らかな注入素材として、多くの専門医や患者様から支持を得ています。

その特徴は、しこりのリスクを抑えながら、色味の改善や肌質の向上を同時に目指せる点にあります。

本記事では、ナノリッチの基本的な仕組みから、よく比較されるコンデンスリッチとの明確な違い、そして目の下のクマや肌質に対してどのような変化をもたらすのかを詳しく解説します。

目次

この記事を書いた人

アリエルバストクリニック 院長 石塚 紀行

石塚 紀行
ARIEL .BUST.CLINIC 院長
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資格・所属

  • 日本形成外科学会専門医
  • コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
  • VASER Lipo認定医
  • Juvederm Vista 認定医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
  • 日本形成外科学会所属
  • 日本美容外科学会(JSAPS)所属

【略歴】
ご自身の脂肪を活用した豊胸術や顔・お尻などへの脂肪注入、そして脂肪吸引によるボディメイクを専門とする形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINICを開院。

ARIEL .BUST.CLINICは、ご自身の脂肪を活用した脂肪注入(豊胸・顔・お尻など)を得意とする名古屋のクリニックです。それぞれの体型や悩みに応じた専門性を活かしたご提案をしており、脂肪採取(脂肪吸引)から注入、傷跡や傷のケアに至るまで、形成外科専門医としての知識と技術を評価いただき、全国から患者様にお越しいただいています。

ボディメイクは決して焦る必要のないものです。このサイトでは脂肪注入に関連する多くの記事を書いていますので、すぐに施術を決めることはせず、まずはぜひ患者様自身で知識をつけた上でご希望のクリニックへ相談されるようにしてください。

ナノリッチの基本概念と注入治療における位置づけ

ナノリッチとは、ご自身の体から採取した脂肪を特殊な技術で加工し、不純物を極限まで取り除いた後に、さらに微細化した脂肪細胞(幹細胞を含む)を注入する施術のことを指します。

正式名称をナノファットと呼ぶこともありますが、日本ではナノリッチという名称で広く知られています。

この施術の最大の特徴は、採取した脂肪をそのまま使うのではなく、繊維組織を除去して液状に近い状態まで滑らかにする点にあります。

通常の脂肪注入では、脂肪の粒が大きいために皮膚の薄い部分に注入すると凸凹してしまうリスクがありました。

しかし、ナノリッチはこの課題を解決し、皮膚が非常に薄い目の下や、細かなシワに対しても均一に注入することを可能にしました。

自分の組織を使用するため、アレルギー反応のリスクが極めて低く、定着すれば長期間にわたって効果が持続するというメリットがあります。

不純物除去と微細化技術の仕組み

ナノリッチを作成するためには、まず太ももやお腹などから脂肪を採取します。

採取した脂肪には、血液や麻酔液、死活細胞などの不純物が多く含まれています。これらを遠心分離機にかけて分離させ、健全な濃縮脂肪(コンデンスリッチファット)を抽出します。

ここからがナノリッチ独自の工程です。抽出した濃縮脂肪を、特殊なフィルターに何度も通すことで、脂肪細胞を破壊しないように注意しながら、さらに細かく粉砕・濾過を行います。

この作業によって、脂肪に含まれる繊維質な組織が取り除かれ、クリームのように滑らかなテクスチャーへと変化します。

この微細な加工技術こそが、デリケートな部位への注入を成功させる鍵となります。

幹細胞が豊富に含まれる理由

ナノリッチのもう一つの大きな魅力は、幹細胞が豊富に含まれていることです。

脂肪を微細化する過程で、脂肪細胞自体は小さくなりますが、組織の再生や修復を助ける幹細胞はしっかりと残ります。

むしろ、濃縮する過程で単位体積あたりの幹細胞密度が高まると考えられています。

幹細胞には、周囲の細胞に働きかけてコラーゲンやエラスチンの生成を促す作用や、新しい血管を作り出して血流を改善する作用があります。

単にボリュームを補うだけでなく、注入した部位の皮膚そのものを若々しく再生させる効果が期待できるため、肌質改善を目的とした治療としても非常に高く評価されています。

従来のヒアルロン酸注入との違い

目の下のクマやシワ治療といえば、ヒアルロン酸注入を思い浮かべる方も多いでしょう。

ヒアルロン酸は手軽で即効性がありますが、時間が経つと吸収されてなくなってしまうため、定期的なメンテナンスが必要です。

また、皮膚の薄い目の下に入れると、透けて青白く見える「チンダル現象」が起きたり、水分を吸収して膨らみすぎたりすることがあります。

一方、ナノリッチは自己組織であるため、一度定着してしまえばその効果は半永久的です。

色味も肌馴染みの良い乳白色や黄色味を帯びているため、青クマや茶クマの色味を自然にカバーするコンシーラーのような役割も果たします。

人工物ではなく、自分自身の体の一部を使って美しさを作るという点で、長期的なコストパフォーマンスや安全性を重視する方に選ばれています。

コンデンスリッチとナノリッチの明確な違い

脂肪注入を検討する際に、必ずと言っていいほど比較されるのが「コンデンスリッチファット(CRF)」と「ナノリッチ」です。

どちらも同じご自身の脂肪から作られますが、その性質や適応部位、期待できる効果には明確な違いがあります。

これらを混同して理解してしまうと、期待通りの結果が得られない可能性があります。

簡単に言えば、コンデンスリッチは「ボリュームアップと形成」を得意とし、ナノリッチは「色味の改善と肌質の向上」を得意とします。

多くのクリニックでは、これら二つを組み合わせて、深層にはコンデンスリッチを、浅層にはナノリッチを注入するという手法をとっています。

それぞれの特性を正しく理解し、ご自身の悩みに合わせて使い分ける、あるいは併用することが重要です。

ナノリッチとコンデンスリッチの比較

比較項目ナノリッチコンデンスリッチ
脂肪の粒子の大きさ極めて微細(液状に近い)比較的大きい(粒状)
主な適応部位目の下の皮膚直下、細かいシワ額、こめかみ、頬、胸、お尻
主な目的・効果色味改善(青クマ)、肌質改善ボリュームアップ、輪郭形成

粒子の大きさと注入可能な深さ

コンデンスリッチの脂肪粒子は、ある程度の大きさを持っています。そのため、皮膚の深い層や筋肉の中に注入して、土台からしっかりと持ち上げるような治療に適しています。

しかし、これを皮膚の浅い層に入れてしまうと、皮膚表面がボコボコとしたり、しこりが触れたりする原因になります。

対してナノリッチは、繊維組織を除去してマイクロレベルまで微細化されています。非常に滑らかであるため、皮膚の極めて浅い層(真皮直下など)に注入しても凹凸ができる心配がほとんどありません。

これまで注入が難しいとされていた皮膚の薄い目元や、首の横ジワ、口元の細かいシワなどに対して、繊細なアプローチが可能になります。

ボリュームアップ効果の差

ボリュームを出す力に関しては、コンデンスリッチの方が優れています。

頬のこけを治したい、額を丸くしたい、胸を大きくしたいといった要望には、粒のしっかりしたコンデンスリッチが必要です。

ナノリッチは微細化されている分、ボリュームを出す力は控えめです。窪みを物理的に埋めるというよりは、薄くなった皮膚に厚みを持たせたり、肌のハリを取り戻したりする役割が強いと考えましょう。

例えば、目の下の大きな窪み(凹み)はコンデンスリッチで土台を持ち上げ、表面の青黒い色味やちりめんジワはナノリッチで整える、というように、両者の「得意分野」を組み合わせることで、より立体的で美しい仕上がりが実現します。

定着率と持続性の比較

脂肪注入において重要なのが定着率です。コンデンスリッチは不純物を取り除いているため、通常の脂肪注入よりも高い定着率(一般的に80%前後と言われます)を誇ります。

ナノリッチも同様に、不純物が徹底的に除去されているため、注入された幹細胞や脂肪細胞が生き残りやすい環境が整っています。

ただし、ナノリッチはボリュームを出すための脂肪塊としての生存というよりは、組織再生因子としての作用が中心となる場合もあります。

どちらも一度定着した組織は、ご自身の体の一部として代謝に合わせて自然に老化していくため、急激になくなることはありません。

長期的な視点で見れば、どちらも非常に優れた持続性を持っています。

目の下のクマに対する具体的な改善のしくみ

目の下のクマは、顔の印象を大きく左右し、疲れた表情や老けた印象を与える最大の要因の一つです。

クマにはいくつかの種類があり、それぞれ原因が異なりますが、ナノリッチは特に「青クマ」と「茶クマ」、そして皮膚の薄さが原因で起こる「黒クマ(影クマ)」の複合的な症状に対して高い効果を発揮します。

目の下の皮膚は体の中で最も薄く、卵の薄皮程度しかありません。

そのため、下にある血管や筋肉が透けて見えやすく、また加齢による菲薄化(ひはくか:皮膚がさらに薄くなること)が進みやすい部位です。

ナノリッチはこのデリケートなエリアに対し、皮膚の厚みを補い、再生を促すことで根本的な解決を図ります。

青クマへのアプローチ

青クマは、血行不良などが原因で、目の下の薄い皮膚から静脈血が透けて見えている状態です。色白の方や皮膚が薄い方に多く見られます。

ナノリッチに含まれる脂肪は、黄色味を帯びた乳白色をしています。これを皮膚の浅い層に薄く敷くように注入することで、物理的に血管の色を遮断するフィルターのような役割を果たします。

さらに、ナノリッチに含まれる豊富な幹細胞が新しい血管の生成を促し、局所の血流そのものを改善する効果も期待できます。

つまり、透けて見える色を隠す「マスキング効果」と、血流を良くする「根本改善」の二つのアプローチで、青クマを目立たなくさせます。

黒クマ(影クマ)と皮膚の菲薄化対策

黒クマの正体は、目の下の脂肪(眼窩脂肪)の突出による膨らみと、その下の窪みによってできる「影」です。

加えて、加齢により皮膚が薄くなり、ハリが失われることで、より影が濃く見えてしまいます。

根本的な治療としては、脱脂手術(眼窩脂肪を取り除く手術)と組み合わせて行われることが多いですが、ナノリッチ単独でも効果を発揮する場面があります。

それは、皮膚自体に厚みとハリを持たせることです。

ペラペラになった皮膚の下にナノリッチの層を作ることで、皮膚がふっくらとし、影ができにくい滑らかな状態へと導きます。

脱脂手術後に生じやすい、皮膚の余りや小ジワの予防としても、ナノリッチの注入は非常に有効です。

茶クマ(色素沈着)への影響

茶クマは、目を擦る癖や紫外線、メイクによる色素沈着が原因で、皮膚そのものが茶色く染まってしまった状態です。

本来、色素沈着に対してはレーザー治療や外用薬が第一選択となりますが、ナノリッチも補助的な効果をもたらします。

ナノリッチに含まれる幹細胞が肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常化し、蓄積されたメラニンの排出を促す可能性があります。

また、肌全体のトーンが明るくなり、キメが整うことで光の反射が変わり、茶色い色が視覚的に目立ちにくくなるという効果も期待できます。

劇的に色が消えるわけではありませんが、肌質が健康的になることで、全体的な目元の明るさを取り戻すことができます。

クマの種類別ナノリッチの効果

クマの種類原因ナノリッチの効果
青クマ血行不良・皮膚が薄い色味の遮断と血流改善
黒クマたるみ・窪みによる影皮膚の厚み増加とハリ感
茶クマ色素沈着ターンオーバー促進とトーンアップ

肌質改善とアンチエイジング効果の真実

ナノリッチの真骨頂は、単なる充填材としての役割を超えた「再生医療」的な側面にあります。

脂肪幹細胞が豊富に含まれているナノリッチを注入すると、肌の内部では細胞レベルでの活性化が始まります。

これは、一時的にシワを伸ばすだけの対症療法とは異なり、肌の老化時計を少し巻き戻すような根本的なアンチエイジング治療と言えます。

年齢とともに減少していくコラーゲンやエラスチンといった肌の弾力を支える成分を、自らの細胞の力で再び作り出すことができるのです。

特に、ちりめんジワや毛穴の開き、肌のくすみといった、表面的な肌質の衰えを感じている方にとって、ナノリッチは化粧品では届かない真皮層への強力なアプローチとなります。

線維芽細胞の活性化とコラーゲン生成

私たちの肌の真皮層には、「線維芽細胞」というコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を生み出す工場のような細胞が存在します。

しかし、加齢や紫外線のダメージにより、この線維芽細胞の働きは年々衰えていきます。

ナノリッチに含まれる脂肪由来幹細胞は、この線維芽細胞に直接働きかけたり、あるいは自らが線維芽細胞に分化したりすることで、再び活発にコラーゲンなどを生成するように促します。

その結果、肌の内側から密度が高まり、パンとしたハリや弾力が蘇ります。

表面的な保湿ではなく、肌の土台そのものが再構築されるため、自然で若々しい質感を取り戻すことができます。

ちりめんジワと毛穴の改善

目尻や目の下にできる細かくて浅い「ちりめんジワ」は、乾燥や皮膚の痩せが主な原因です。

ボトックス注射は表情筋の動きを止めることでシワを防ぎますが、すでに刻まれてしまった細かいシワや、皮膚の質感低下によるシワには効果が限定的です。

ここでナノリッチが力を発揮します。

液状化された脂肪が細かいシワの溝に行き渡り、内側からふっくらと持ち上げます。同時に、幹細胞の働きで皮膚の水分保持能力が高まり、キメが整うことで毛穴も目立ちにくくなります。

ファンデーションがシワに入り込んでしまう悩みや、夕方になると目元がパサつくといった悩みに対し、根本からの改善が期待できます。

首や手の甲などへの応用

ナノリッチの効果は顔だけにとどまりません。年齢が出やすいと言われる「首の横ジワ」や、血管が浮き出てゴツゴツとした印象になりがちな「手の甲」の若返りにも非常に適しています。

これらの部位も皮膚が薄く、通常の脂肪注入では凸凹しやすい難しいエリアですが、滑らかなナノリッチであれば自然に馴染ませることができます。

首のシワ一本一本に丁寧に注入することでシワを目立たなくさせたり、手の甲全体に注入してふっくらと女性らしい手元を取り戻したりすることが可能です。

顔のケアは念入りにしていても、首や手元で年齢を感じさせてしまうことは多いため、トータルでのエイジングケアとしてナノリッチを選択する方が増えています。

施術の流れと安全への配慮

ナノリッチの施術を受けるにあたり、当日の流れや具体的な手順を知っておくことは安心感につながります。

手術と聞くと大掛かりなイメージを持つかもしれませんが、ナノリッチの施術自体は日帰りで受けることができ、体への負担も最小限に抑えられています。

クリニックでは衛生管理を徹底し、痛みをコントロールするための麻酔の使用や、リラックスできる環境づくりに努めています。

カウンセリングから施術、そして帰宅までの一般的なフローを確認することで、ご自身が施術を受ける際の具体的なイメージを持つことができます。

ナノリッチ治療の主な対象者

悩み・症状ナノリッチが適している理由
目元の細かいシワ微細な脂肪がシワの溝を埋め、再生を促すため
目の下の青クマ皮膚の厚みを出し、血管の透けをカバーするため
皮膚の薄さ・ハリ不足幹細胞の力でコラーゲン生成を促進するため

脂肪採取と麻酔の工夫

施術はまず、脂肪を採取するところから始まります。一般的には太ももの内側や膝の内側、あるいはお腹などから採取します。

採取量はナノリッチを作るだけであればごく少量で済みますが、コンデンスリッチと併用する場合は必要な量を確保します。

痛みを感じないよう、局所麻酔に加えて、眠っているような状態で受けられる静脈麻酔を併用することがほとんどです。

そのため、気づいたら終わっていたという感覚で手術を受けることができます。

採取部位には数ミリ程度の小さな傷ができますが、シワに沿って目立たない位置を選び、丁寧に縫合するため、治癒後はほとんど分からなくなります。

脂肪の加工と精製プロセス

採取した脂肪は、外気に触れない清潔なシリンジの中で加工されます。

まず遠心分離を行い、血液や麻酔液、老化した細胞などの不純物を分離・廃棄します。

ここで得られた良質な脂肪(コンデンスリッチファット)の一部を、さらにナノリッチ生成用の特殊なフィルターキットに通します。

このキットには非常に微細な網目がついており、脂肪を何度も行き来させることで、脂肪細胞を粉砕し、結合組織を取り除きます。

この工程を経て、最終的にクリーム状の滑らかなナノリッチが完成します。

この一連の作業は、感染リスクを防ぐためにすべて閉鎖回路内(シリンジとチューブの中)で行われます。

繊細な注入技術とデザイン

加工が終わると、いよいよ注入です。

ナノリッチの注入には、非常に細い針(カニューレなど)を使用します。目の下などの皮膚が薄い部分は、わずかな注入量の差が仕上がりを大きく左右するため、医師の技術と美的センスが問われます。

一度に大量に入れるのではなく、少しずつ層を重ねるように丁寧に注入していきます。鏡を見ながら座位で確認する場合もあります。

注入箇所は針穴程度で済むため、傷跡は翌日にはほとんど目立たなくなります。

お顔全体のバランスを見ながら、クマの解消だけでなく、ゴルゴラインやマリオネットラインなど、気になる箇所へ同時にアプローチすることもあります。

ダウンタイムの経過とリスク管理

美容医療を受ける上で、ダウンタイム(回復期間)とリスクについての理解は欠かせません。ナノリッチは比較的ダウンタイムが軽い施術と言われていますが、全くないわけではありません。

体に針を刺し、脂肪を注入する以上、生体反応としての腫れや内出血は必ず起こり得ると考えておくべきです。

しかし、これらは時間の経過とともに自然に消失する一時的なものです。

大切なのは、術後の経過を正しく予測し、仕事やプライベートのスケジュールを調整すること、そして万が一の症状に対して冷静に対処することです。

具体的な経過と注意点を事前に把握しておくことが大切です。

ダウンタイム期間の目安

症状ピーク落ち着くまでの目安
腫れ・浮腫み翌日〜3日目1週間〜2週間程度
内出血(青あざ)翌日〜3日目1週間〜2週間程度(黄色く変化し消失)
採取部位の筋肉痛翌日〜3日目1週間程度

腫れと内出血の期間

注入直後は麻酔の影響もあり少し腫れぼったく感じますが、本格的な腫れのピークは翌日から3日目くらいに来ることが多いです。

目の下の場合、泣きはらしたような腫れが出ることがあります。

内出血が出た場合は、最初は赤紫色のあざのようになりますが、数日で黄色っぽく変化し、重力に従って少し下がってから消えていきます。

これらはメイクやマスク、メガネなどで隠せる範囲のことが多いですが、大事な予定の直前は避けるのが賢明です。

ナノリッチ単独であれば腫れは比較的軽度ですが、脱脂手術やコンデンスリッチ注入を併用した場合は、もう少し腫れが強く出る傾向があります。

しこり(石灰化)のリスクについて

脂肪注入における最大のリスクとして「しこり(石灰化)」が挙げられます。

これは、注入した脂肪が定着せずに壊死し、体がそれを異物としてカプセル化してしまう現象です。

しかし、ナノリッチに関しては、このリスクは極めて低いと言えます。なぜなら、脂肪を微細化しており、大きな塊として注入することがないからです。

分散された微細な脂肪は周囲の組織から酸素や栄養を受け取りやすく、スムーズに生着します。

ただし、絶対に起きないとは言い切れません。経験豊富な医師が適切な層に適切な量を注入することが、リスク回避の絶対条件となります。

万が一しこりが気になった場合でも、ステロイド注射などで改善できるケースがほとんどです。

術後の過ごし方と注意点

脂肪の定着を良くするためには、術後1ヶ月程度の過ごし方が重要です。

注入した脂肪はまだ不安定な状態ですので、強く擦ったり、マッサージをしたりすることは避けてください。また、過度なダイエットや激しい運動、喫煙は、脂肪の定着を妨げる要因となります。

血流を良くすることは大切ですが、サウナや長風呂などで体を温めすぎると、初期段階では腫れや内出血を悪化させる可能性があります。

脂肪吸引を行った足の患部については、圧迫固定を行うことが一般的です。医師の指示に従い、無理のない生活を送ることで、より良い仕上がりを目指すことができます。

術後の禁止事項リスト

  • 患部のマッサージ(術後1ヶ月間は厳禁)
  • 激しい運動やサウナ(腫れが引くまでは控える)
  • 過度なダイエット(脂肪の定着を悪くするため)

ナノリッチが向いている人と選択のポイント

ナノリッチは素晴らしい治療法ですが、すべての人にとってベストな選択とは限りません。ご自身の悩みや肌の状態、求める仕上がりによって、適した治療法は異なります。

ナノリッチの特徴を最大限に活かせるのは、どのようなタイプの方なのでしょうか。ご自身の症状と照らし合わせながら検討してみてください。

また、クリニック選びにおいては、ナノリッチの特性を深く理解し、他の治療法との組み合わせも含めて提案してくれる医師を見つけることが大切です。

どのようなケースでナノリッチを選ぶべきか、具体的に見ていきましょう。

皮膚が薄く青クマが目立つ方

前述の通り、皮膚が薄くて血管が透けて見える「青クマ」に悩んでいる方には、ナノリッチは非常に有効な選択肢です。

ヒアルロン酸ではチンダル現象のリスクがあるため、脂肪注入、特にナノリッチのような滑らかな素材が適しています。

メイクで隠そうとすると厚塗りになり、かえってシワが目立ってしまうような場合、ナノリッチで土台の色味を補正することで、薄いメイクでも明るい目元を演出できるようになります。

コンシーラーいらずの肌を目指したい方には強く推奨されます。

目元のちりめんジワや質感を改善したい方

笑った時にできる目尻の細かいシワや、目の下のカサカサとした質感が気になる方にも適しています。

深いシワや大きな窪みにはコンデンスリッチや他の治療が必要ですが、表面的な「老け感」を取り除くにはナノリッチの再生作用が効果的です。

特に、すでに脱脂手術を受けたけれど、なんとなく目元が暗い、小ジワが増えた気がするといった場合の「仕上げ」の治療としても選ばれています。

肌そのものの若返りを図りたいというニーズに応える治療と言えます。

自然な仕上がりと安全性を重視する方

「整形しました」というような劇的な変化よりも、誰にも気づかれないような自然な若返りを望む方にとってナノリッチは理想的です。

異物を入れないため、触り心地も自分の皮膚そのものであり、違和感がありません。

また、将来的なメンテナンスの頻度を減らしたい、何度もクリニックに通うのは大変だという方にとっても、定着すれば長持ちする脂肪注入は合理的です。

ご自身の体から採取した素材を使うという安心感も、ナノリッチを選ぶ大きな理由の一つとなっています。

ナノリッチに関するよくある質問

ナノリッチだけで目の下のたるみは取れますか?

ナノリッチ単独では、大きな「たるみ(眼窩脂肪の突出)」そのものを取ることはできません。

たるみが原因で膨らんでいる場合は、まず「経結膜脱脂法」などで余分な脂肪を取り除く必要があります。

その上で、皮膚の薄さや色味を改善するためにナノリッチを注入するという併用療法を行うことで、より美しくフラットな目元に仕上がります。

注入した脂肪はずっと残りますか?

注入された脂肪細胞がその場所で血液循環を獲得し、定着(生着)すれば、その脂肪は半永久的に残ります。

一般的には注入量の数十パーセントが定着すると言われていますが、ナノリッチは幹細胞の働きにより良好な定着が期待できます。

ただし、定着した脂肪もご自身の体の細胞ですので、加齢とともに自然に老化や減少はしていきます。

ヒアルロン酸が入っていますが、ナノリッチは受けられますか?

すでにヒアルロン酸が入っている場所にナノリッチを注入する場合、まずはヒアルロン酸を溶かす処置(ヒアルロニダーゼ注射)を行うことが推奨されます。

ヒアルロン酸が残った状態で脂肪を注入すると、正確なデザインが難しかったり、しこりのリスクが高まったりする可能性があるためです。

医師の診察により、溶かす必要があるかを判断します。

お化粧はいつから可能ですか?

目元以外のメイクは当日から可能なクリニックが多いです。目元のメイク(アイシャドウやコンシーラーなど)に関しては、注入した針穴が塞がる翌日から可能となる場合が一般的です。

ただし、患部を強く擦ったり押したりしないよう、優しく行うように心がけてください。洗顔やシャワーも当日から可能ですが、患部は優しく洗うようにしましょう。

参考文献

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