顔の脂肪注入の定着率を上げる5つの方法|効果を長持ちさせる術後の過ごし方

ご自身の脂肪を顔に注入し、ハリやボリュームを取り戻す「顔の脂肪注入」。

せっかく治療を受けるなら、注入した脂肪にできるだけ長く、多く残ってほしいと願うのは当然のことです。

脂肪の定着率は、注入技術だけでなく、術後のご自身の過ごし方にも大きく左右されます。

この記事では、顔の脂肪注入の定着率を医学的な観点から解説し、効果を長持ちさせるために術後すぐに実践できる5つの具体的な方法と、生活習慣の注意点を詳しくご紹介します。

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この記事を書いた人

アリエルバストクリニック 院長 石塚 紀行

石塚 紀行
ARIEL .BUST.CLINIC 院長
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資格・所属

  • 日本形成外科学会専門医
  • コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
  • VASER Lipo認定医
  • Juvederm Vista 認定医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
  • 日本形成外科学会所属
  • 日本美容外科学会(JSAPS)所属

【略歴】
ご自身の脂肪を活用した豊胸術や顔・お尻などへの脂肪注入、そして脂肪吸引によるボディメイクを専門とする形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINICを開院。

ARIEL .BUST.CLINICは、ご自身の脂肪を活用した脂肪注入(豊胸・顔・お尻など)を得意とする名古屋のクリニックです。それぞれの体型や悩みに応じた専門性を活かしたご提案をしており、脂肪採取(脂肪吸引)から注入、傷跡や傷のケアに至るまで、形成外科専門医としての知識と技術を評価いただき、全国から患者様にお越しいただいています。

ボディメイクは決して焦る必要のないものです。このサイトでは脂肪注入に関連する多くの記事を書いていますので、すぐに施術を決めることはせず、まずはぜひ患者様自身で知識をつけた上でご希望のクリニックへ相談されるようにしてください。

顔の脂肪注入の「定着」とは?

注入した脂肪がすべてその場に留まるわけではなく、一部は吸収されます。

定着とは、注入された脂肪細胞が新しい場所で毛細血管から栄養を受け取り、生き残ることを指します。

この定着率を高めることが、持続的な効果を得るための鍵となります。

注入した脂肪がすべて生き残るわけではない

顔に注入された脂肪細胞は、いわば「お引越し」をした状態です。新しい環境で生き残るためには、周囲の組織から酸素や栄養をもらう必要があります。

そのために、毛細血管が新しく作られ、脂肪細胞とつながることが重要です。

しかし、すべての脂肪細胞がうまく栄養を受け取れるわけではありません。栄養が届かなかった脂肪細胞は、残念ながら時間とともに体内に吸収されてしまいます。

一般的に、顔の脂肪注入の定着率は30%から70%程度とされ、個人差や注入部位、クリニックの技術によって幅があります。

100%定着することはない、という点をまず理解しておくことが大切です。

定着率が決まる時期

脂肪が定着するかどうかは、術後すぐの期間、特に最初の1ヶ月から3ヶ月が勝負です。この期間に、脂肪細胞が新しい血管とつながり、栄養を受け取れる体制を確立します。

注入直後はまだ脂肪が安定しておらず、非常にデリケートな状態です。術後3ヶ月を過ぎると生き残った脂肪細胞は安定し、その場所の組織の一部となります。

この時期までの過ごし方が、最終的な定着率を大きく左右します。

術後の経過と定着の目安

時期状態定着への影響
術後1〜2週腫れ・内出血が目立つ時期。脂肪はまだ不安定。血流が定着の鍵。安静が必要。
術後1ヶ月大きな腫れが引く。脂肪が栄養を求め始める。血管が新生され始める重要な時期。
術後3ヶ月腫れがほぼ落ち着く。定着する脂肪が決まる。定着した脂肪は安定し始める。
術後6ヶ月ほぼ完成。定着した脂肪は半永久的に残る。定着完了。

なぜ定着率に個人差が出るのか

定着率には個人差がありますが、その要因は様々です。もともとの体質や血行の良し悪し、年齢なども関係しますが、それ以上に影響するのが「脂肪の質」と「注入技術」です。

例えば、喫煙習慣がある方は毛細血管が収縮しやすいため血行が悪く、脂肪細胞に栄養が届きにくくなり、定着率が下がる傾向があります。

また、採取した脂肪の処理方法や、医師がどれだけ丁寧に脂肪を注入するかによっても結果は大きく変わってきます。

定着しなかった脂肪のゆくえ

では、定着しなかった脂肪細胞はどうなるのでしょうか。

栄養を受け取れなかった脂肪細胞は、やがて壊死し、体内の免疫細胞(マクロファージなど)によって分解・吸収されます。

これは体の正常な反応であり、適切に吸収されれば大きな問題は起こりません。

ただし、一度に多くの脂肪が壊死すると、吸収が追いつかずに「しこり(石灰化)」や「オイルシスト(油の袋)」として残ることがあります。

これを防ぐためにも、適切な量を丁寧に注入する技術が求められます。

定着しなかった脂肪の主な経過

  • マクロファージによる分解
  • 体液と共にリンパ管へ吸収
  • 老廃物として体外へ排出

勘違いしやすい?定着率に関する思い込み

脂肪注入に関して、患者様が抱きがちな「思い込み」がいくつかあります。良かれと思ってやったことが、実は定着を妨げているケースも少なくありません。

よくある誤解を解き、正しい知識を身につけましょう。

「たくさん注入すれば多く残る」は間違い

「どうせ減るなら、最初からパンパンになるくらい多く入れてほしい」と希望される方がいます。しかし、これは逆効果になる可能性が高い考え方です。

脂肪細胞が生き残るためには、周囲の組織から栄養をもらう必要があります。一度に大量の脂肪をギュウギュウに詰め込むと、脂肪細胞同士が密集しすぎます。

この状態では、中心部の脂肪細胞まで毛細血管からの栄養が届かず、結果として多くの脂肪が壊死してしまいます。

壊死した脂肪が多いと、しこりのリスクも高まります。

定着率を高めるには、適切な量を適切な層に「分散」して注入することが重要です。量を多く入れることと、多く残すことはイコールではありません。

「若い人ほど定着しやすい」とは限らない

確かに若い方は細胞の活性度が高く血行も良い傾向にあるため、定着に有利な面はあります。しかし、定着率は年齢だけで決まるものではありません。

例えば、20代でも喫煙者で血行が悪い方と、40代でも健康的な生活を送り血行が良い方とでは、後者の方が定着率が高いことも十分にあり得ます。

年齢という数字よりも、ご自身の「体の健康状態」や「血流の状態」が定着に直結すると考えてください。

「太っている人の脂肪=質が良い」ではない

脂肪の「量」と「質」は別問題です。痩せ型の方からでも、良質で健康な脂肪細胞を採取することは可能です。

逆に、皮下脂肪が多くても、不健康な生活習慣を送っている方の脂肪は、細胞自体が弱っている可能性があります。

大切なのは、採取した脂肪から不純物(血液、麻酔液、壊れた脂肪細胞など)を丁寧に取り除き、健康で密度の高い脂肪細胞(コンデンスリッチファットなど)を選別して使用することです。

この「脂肪の加工・処理」の工程が、定着率を左右する大きなポイントとなります。

脂肪の「質」に影響する要素

質を高める要素質を下げる可能性のある要素
健康的な生活習慣喫煙・過度の飲酒
バランスの取れた食事不規則な生活・睡眠不足
適切な脂肪処理(濃縮)採取時の強い圧力

術後の「マッサージ」は逆効果?

注入した脂肪を馴染ませようと、術後に自己判断でマッサージをする方がいますが、これは絶対にお勧めできません。

注入直後の脂肪細胞は、まだ周囲の組織と生着しておらず、非常に不安定な状態です。

この時期にマッサージなどで強い圧力を加えると、せっかく注入した脂肪細胞が壊れてしまったり、意図しない場所に移動してしまったりする可能性があります。

また、新しくでき始めている毛細血管を傷つけ、栄養供給を妨げることにもなりかねません。

術後1ヶ月程度は、注入部位を優しく扱うことが鉄則です。「触らない」「圧迫しない」ことが、定着への一番の近道です。

定着率を上げる方法1 ダウンタイムの過ごし方

術後のダウンタイムは、脂肪が生き残るかどうかの最初の関門です。この時期の過ごし方次第で、数ヶ月後の結果が大きく変わります。

安静にし、脂肪細胞にとって良い環境を整えることが最も重要です。

安静にし、血流を安定させる

術後数日間は、血圧が上がるような活動を避け、できるだけリラックスして過ごしてください。

激しい運動や重いものを持つことは、血流を急激に増加させ、腫れや内出血を悪化させる原因となります。

血流が不安定になると、デリケートな脂肪細胞への栄養供給も妨げられます。安静にすることで、体は回復と組織の修復に集中できます。

注入部位の安静を保ち、血流を穏やかに保つことが大切です。

注入部を圧迫・刺激しない

注入した脂肪は定着するまで非常に柔らかく、圧力に弱い状態です。うつ伏せで寝たり、頬杖をついたり、顔を強くこすったりする行為は避けてください。

注入部位が圧迫されると脂肪細胞が壊れるだけでなく、血流も悪くなり、定着率が著しく低下します。

就寝時は、枕を高くして仰向けで寝るよう心がけましょう。

洗顔やメイクの際も、できるだけ優しく触れることが必要です。

ダウンタイム中の主なNG行動

行動理由推奨される対策
うつ伏せ寝・横向き寝注入部位への持続的な圧迫枕を高くして仰向けで寝る
注入部位のマッサージ脂肪細胞の破壊・移動術後1ヶ月は絶対に触らない
激しい運動血圧上昇による腫れ・内出血の悪化ウォーキングなど軽い運動から徐々に

喫煙と飲酒を厳禁する

喫煙は、定着率において最大の敵の一つです。タバコに含まれるニコチンには、毛細血管を強力に収縮させる作用があります。

血管が収縮すると、注入された脂肪細胞へ送られる酸素や栄養が著しく不足します。この状態は、脂肪の定着にとって致命的です。

また、飲酒は血行を必要以上に促進し、腫れや内出血を長引かせる原因となります。

少なくとも術後1ヶ月、可能であれば3ヶ月は禁煙・禁酒を徹底することが定着率を上げるために強く求められます。

睡眠時間を十分に確保する

体は寝ている間に修復されます。特に、成長ホルモンは細胞の修復や再生を促す重要な役割を担っています。

十分な睡眠時間を確保することで、成長ホルモンの分泌が促され、傷ついた組織の回復や新しい血管の生成がスムーズに進みます。

このことは、脂肪細胞が新しい場所で生き残るための環境整備につながります。術後は意識的に早めに就寝し、質の良い睡眠をとるよう心がけてください。

定着率を上げる方法2 食事と栄養管理

注入した脂肪細胞も、生きていくためには「栄養」が必要です。

術後は、脂肪細胞の「エサ」となる栄養素を積極的に摂取することが、定着率アップにつながります。特にタンパク質やビタミン類は重要です。

脂肪の栄養源となるタンパク質を摂る

タンパク質は、体のあらゆる細胞を作るための基本的な材料です。注入された脂肪細胞が生き残り、成長するためにもタンパク質は欠かせません。

また、傷ついた組織の修復や、新しい血管を作るためにも使われます。

術後は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、良質なタンパク質を毎日の食事で意識して摂取しましょう。

タンパク質を多く含む食品例

  • 鶏むね肉・ささみ
  • 鮭・マグロ・アジ
  • 豆腐・納豆

血行をサポートするビタミンE

ビタミンEには、毛細血管を広げ、血流をスムーズにする働きがあります。血行が良くなることで、注入された脂肪細胞の隅々まで酸素と栄養素が行き渡りやすくなります。

この働きが、脂肪の定着を強力にサポートします。

ビタミンEは、ナッツ類や植物油、アボカドなどに多く含まれています。ただし、脂溶性ビタミンのため、過剰摂取には注意し、バランスよく取り入れることが大切です。

ビタミンEを多く含む食品例

  • アーモンド・ピーナッツ
  • アボカド
  • かぼちゃ
  • 植物油(ひまわり油、綿実油など)

コラーゲン生成を助けるビタミンC

ビタミンCは、血管や皮膚を丈夫にするコラーゲンの生成を助ける働きがあります。新しい毛細血管を作る際にもビタミンCは重要な役割を果たします。

また、ビタミンCには抗酸化作用があり、手術によるダメージからの回復を早める効果も期待できます。

野菜や果物からこまめに摂取することを心がけてください。

過度なダイエットは厳禁

術後に「顔が太ったから」と急にダイエットを始めるのは絶対にやめてください。特に、極端な食事制限を行うと、体全体が栄養不足の状態になります。

体は生命維持を優先するため、新しく注入された脂肪細胞への栄養供給は後回しにされてしまいます。

栄養不足は定着率を著しく低下させる最大の原因です。

術後3ヶ月から6ヶ月は、体重を安定させ、バランスの取れた食事を続けることが何よりも重要です。

定着した脂肪は、ご自身の体の一部です。体脂肪が減れば、当然顔の脂肪も減る可能性があることを理解しておきましょう。

定着をサポートする主な栄養素

栄養素主な働き多く含む食品
タンパク質細胞の材料、組織の修復肉、魚、卵、大豆製品
ビタミンE血行促進、抗酸化作用ナッツ類、アボカド、植物油
ビタミンCコラーゲン生成、抗酸化作用野菜、果物

定着率を上げる方法3 術後のスキンケアと生活習慣

ダウンタイム中のデリケートな肌をどう扱うか、また、日常生活の何気ない習慣も定着率に影響します。

注入部位の血流を良好に保ち、余計な刺激を与えない生活を心がけることが必要です。

注入部位の保湿ケア

術後の肌は、腫れや内出血の影響で乾燥しやすくなっています。肌が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からのわずかな刺激にも敏感になります。

注入部位の皮膚の健康状態を保つことは、その下にある脂肪細胞の定着環境を整えることにもつながります。洗顔後は、刺激の少ない化粧水や乳液で優しく保湿ケアを行い、肌の乾燥を防ぎましょう。

ただし、注入部位を強くこすらないよう、細心の注意を払ってください。

紫外線対策の重要性

紫外線は、皮膚の炎症を引き起こし、細胞にダメージを与えます。術後のデリケートな肌が紫外線を浴びると、色素沈着のリスクが高まるだけでなく、皮膚の回復を妨げる可能性があります。

この状況は、皮膚のすぐ下にある脂肪細胞の定着にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

外出時は日焼け止めや帽子、日傘などを活用し、注入部位を紫外線からしっかり守ることが大切です。

長時間の入浴やサウナを避ける

体を温めること自体は血行促進に良いのですが、長時間の入浴やサウナ、岩盤浴などは、体温を急激に上昇させすぎます。

体温が上がりすぎると、血流が活発になりすぎて腫れが強くなったり、かゆみが出たりすることがあります。

また、大量に汗をかくことで脱水傾向になり、血液がドロドロになると、かえって毛細血管の血流が悪くなる可能性も指摘されています。

術後1ヶ月程度は熱いお湯での長風呂は避け、ぬるま湯でのシャワーや短時間の入浴に留めておくのが賢明です。

術後の生活習慣 注意点まとめ

項目推奨される行動避けるべき行動
洗顔・スキンケア優しく保湿する強くこする、マッサージする
紫外線日焼け止め、帽子で防護する無防備に紫外線を浴びる
入浴ぬるま湯でシャワー、短時間の入浴長風呂、サウナ、岩盤浴

定着率を上げる方法4 クリニック選びの視点

患者様ご自身の努力で定着率を上げることも大切ですが、それ以前に「どのクリニックで受けるか」が結果を大きく左右します。

脂肪の採取から注入までの全工程において、いかに脂肪細胞を傷つけずに扱うか、その技術力が定着率に直結します。

脂肪の採取方法と技術

脂肪を採取する際、強い圧力で無理やり吸引すると脂肪細胞が壊れてしまいます。

壊れた細胞は注入しても定着しません。脂肪細胞を傷つけないよう、適切な吸引圧で丁寧に脂肪を吸引する技術が必要です。

また、採取する部位(太もも、腹部など)によっても脂肪の質が異なると言われており、どの部位から採取するかも医師の判断が問われる点です。

脂肪の濃縮・処理方法

採取したばかりの脂肪には、血液や麻酔液、壊れた脂肪細胞(死活細胞)、油滴などの不純物が多く含まれています。

これらをいかに効率よく取り除き、健康で新鮮な脂肪細胞だけを濃縮するかが、定着率を高める最大の鍵となります。

遠心分離機にかける方法が一般的ですが、その中でも特殊なフィルターを用いて不純物を除去し、濃縮する「コンデンスリッチファット(CRF)」などの技術は、従来の脂肪注入よりも高い定着率が報告されています。

脂肪の処理方法による違い

処理方法特徴定着率への期待
単純な遠心分離採取した脂肪をそのまま遠心分離。不純物が残りやすい場合がある。
コンデンスリッチファット(CRF)特殊なフィルターで不純物を除去し濃縮。健康な脂肪細胞の密度が高く、高い定着が期待できる。

注入技術(多層・少量注入)

定着率に関する誤解の部分でも触れましたが、脂肪を「塊」で注入すると、中心部が壊死してしまいます。

定着率を高めるためには、注入する層(皮膚の浅い層から深い層まで)を分け、各層にごく少量の脂肪を「点」で置くように、細かく分散して注入する技術(多層少量注入)が必要です。

この方法は、脂肪細胞が周囲の組織と接触する面積を最大化し、栄養を受け取りやすくするためのものです。

非常に手間と時間がかかる手技であり、医師の経験と技術力が問われます。

定着率を上げる方法5 医師との認識合わせ

技術的に優れた医師に任せることはもちろんですが、患者様ご自身が治療の限界を理解し、医師と「仕上がりのゴール」を共有することも満足のいく結果を得るために重要です。

仕上がりのイメージを具体的に共有する

「ふっくらさせたい」という希望でも、患者様がイメージする「ふっくら」と、医師が考える「ふっくら」が異なっている場合があります。

どの部位にどの程度のボリュームが欲しいのか、具体的な写真などを見せながら、仕上がりのイメージを詳細にすり合わせることが大切です。

医師は定着して減る分を見越して注入量を調整しますが、その「見越し方」についても事前に説明を受け、納得しておくことが必要です。

定着率のリスクや限界を理解する

顔の脂肪注入は、100%の定着を保証できる治療ではありません。先に述べたように、定着率には個人差があり、体質や生活習慣によっては、予想よりも多く吸収される可能性もあります。

また、一度に注入できる量には限界があり、大幅な変化を望む場合は、2回以上の注入が必要になるケースもあります。

こうしたリスクや限界について事前に十分な説明を受け、現実的な期待値を持つことが、術後の「こんなはずじゃなかった」という不満を防ぎます。

アフターケアの指示を正確に守る

クリニックからは、術後の過ごし方について詳細な指示(薬の飲み方、消毒の方法、通院のタイミングなど)が出されます。

これらはすべて、感染を防ぎ、脂肪の定着をサポートするために必要な指示です。自己判断で薬をやめたり、通院を怠ったりすると、トラブルの原因となり、定着率にも悪影響を及ぼす可能性があります。

疑問点があればすぐにクリニックに確認し、指示されたアフターケアを正確に守ることが、医師との信頼関係を築き、最良の結果を得るために重要です。

顔の脂肪注入 定着率に関するよくある質問

最後に、顔の脂肪注入の定着率に関して、患者様から多く寄せられる質問にお答えします。

定着しなかった場合、どうなりますか?しこりになったりしませんか?

注入量が適切であれば、定着しなかった脂肪の多くは体内の免疫細胞によって自然に分解・吸収され、なくなります。

ただし、一度に大量に注入しすぎたり、血流が極端に悪かったりすると、脂肪が壊死して吸収が追いつかず、しこり(石灰化)やオイルシスト(油の袋)として残るリスクがあります。

このリスクを避けるためにも、経験豊富な医師による適切な注入技術が重要です。

2回目の注入はいつから可能ですか?結果を見てから追加したいです。

2回目の注入を行う場合は、最初の注入の結果が完全に安定してから判断するのが基本です。脂肪の定着が完了し、最終的なボリュームが確定するには、最低でも術後3ヶ月、できれば6ヶ月程度待つことをお勧めします。

焦って追加すると、1回目の脂肪がまだ定着過程にあるため、正確な評価ができず、入れすぎの原因にもなります。まずは最初の結果をじっくり待つことが大切です。

術後、顔がパンパンに腫れますか?腫れはいつまで続きますか?

術後数日間から1週間程度は、腫れが最も強く出ます。注入量や体質にもよりますが、「パンパン」と感じる方もいらっしゃいます。

これは、注入した脂肪の量に加え、手術の侵襲による炎症や麻酔液の水分も含まれているためです。大きな腫れは1〜2週間で徐々に引き、内出血も吸収されます。

その後、小さな腫れ(むくみ)が引いていき、3ヶ月ほどでかなりスッキリしますが、最終的に組織が完全に落ち着くのは6ヶ月程度かかります。

定着した後、太ったり痩せたりしたら顔の脂肪はどうなりますか?

定着した脂肪は、他の部位の皮下脂肪と同じように振る舞います。したがって、術後に体重が大幅に増加すれば、注入した顔の脂肪も増えてボリュームが出すぎることがあります。

逆に、大幅にダイエットをして痩せれば、注入した顔の脂肪も減ってしまいます。定着した効果を長く維持するためには、術後の体重管理が非常に重要です。

体重を安定させることが、理想の仕上がりをキープするコツです。

参考文献

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VYAS, Krishna S., et al. Fat graft enrichment strategies: a systematic review. Plastic and reconstructive surgery, 2020, 145.3: 827-841.

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ZHANG, Yuchen, et al. Survival mechanisms and retention strategies in large-volume fat grafting: a comprehensive review and future perspectives. Aesthetic Plastic Surgery, 2024, 48.20: 4178-4193.

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