丸みのある額は女性らしさや若々しさの象徴ですが、ヒアルロン酸ではなく自己組織である脂肪注入を選ぶ際、もっとも気になるのが「せっかく入れた脂肪がすぐに消えてしまうのではないか」という点でしょう。
結論からお伝えすると、注入した脂肪のすべてが定着するわけではありませんが、適切な処置を行えば「すぐに吸収されてなくなる」ということはありません。
一時的な腫れが引いた状態を「吸収された」と誤解するケースも多く見られます。
この記事では、脂肪が定着する仕組みを正しく理解し、定着率を高めるために患者様ご自身ができること、そしてより美しい額を完成させるための2回目の注入の価値について、医学的な根拠に基づき詳しく解説します。
資格・所属
- 日本形成外科学会専門医
- コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
- VASER Lipo認定医
- Juvederm Vista 認定医
- 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
- 日本形成外科学会所属
- 日本美容外科学会(JSAPS)所属
【略歴】
ご自身の脂肪を活用した豊胸術や顔・お尻などへの脂肪注入、そして脂肪吸引によるボディメイクを専門とする形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINICを開院。
ARIEL .BUST.CLINICは、ご自身の脂肪を活用した脂肪注入(豊胸・顔・お尻など)を得意とする名古屋のクリニックです。それぞれの体型や悩みに応じた専門性を活かしたご提案をしており、脂肪採取(脂肪吸引)から注入、傷跡や傷のケアに至るまで、形成外科専門医としての知識と技術を評価いただき、全国から患者様にお越しいただいています。
ボディメイクは決して焦る必要のないものです。このサイトでは脂肪注入に関連する多くの記事を書いていますので、すぐに施術を決めることはせず、まずはぜひ患者様自身で知識をつけた上でご希望のクリニックへ相談されるようにしてください。
額の脂肪注入が「すぐに吸収される」と言われる本当の理由とは何か
額への脂肪注入を検討中の方がインターネットで検索をすると、「すぐになくなった」「吸収されて元に戻った」という体験談を目にするときがあります。
しかし、これらは脂肪細胞がすべて死滅して吸収されたことを意味するわけではありません。多くの場合、術後の経過における「見え方の変化」と「実際の脂肪の定着」との間にギャップが生じているのが原因です。
術後の腫れと麻酔液によるボリュームダウンの錯覚
脂肪注入の手術直後は、注入した脂肪そのものの体積に加え、局所麻酔液の水分や、手術操作による炎症反応としての「腫れ」が合わさっています。
つまり、術直後の額の丸みは、最終的な仕上がりよりも過剰に膨らんでいる状態です。術後1週間から2週間ほど経過すると、麻酔液は体内に吸収され、炎症による腫れも急速に引いていきます。
この急激なボリュームダウンを目の当たりにしたとき、「注入した脂肪がすべて吸収されてしまった」と錯覚してしまう場合があります。
実際には、余分な水分が抜けただけであり、脂肪細胞自体はそこに留まっているケースが多いのです。この時期は不安になりやすいですが、体が正常な治癒過程を辿っている証拠でもあります。
腫れが完全に引き、移植された脂肪細胞が血管と結びついて安定するまでには、少なくとも3ヶ月程度の時間が必要です。
経過時期による額の状態変化
| 時期区分 | 期間の目安 | 額の状態で起こること |
|---|---|---|
| ダウンタイム期 | 術後〜2週間 | 麻酔液と炎症反応により、希望のデザインよりもパンパンに膨らんでいる状態。内出血が見られることもある。 |
| 吸収・変化期 | 2週間〜3ヶ月 | 腫れが引き、栄養が行き渡らなかった一部の脂肪が吸収される。ボリュームが減ったように感じ、不安になりやすい時期。 |
| 完成・安定期 | 3ヶ月〜半年以降 | 血管がつながり、生き残った脂肪細胞が完全に定着する。これ以降、急激にボリュームが減ることはなく、半永久的に維持される。 |
移植された脂肪細胞が生き残るための生理的な環境変化
お腹や太ももから採取された脂肪細胞は、一度体から切り離され、額という新しい場所に移植されます。このとき、脂肪細胞は一時的に酸素や栄養が供給されない「虚血状態」に陥ります。
移植後、額の周辺組織から新しい血管が伸びてきて(血管新生)、再び酸素と栄養が届くようになるまでの間、脂肪細胞は過酷な環境に耐えなければなりません。
この期間に耐えきれなかった一部の脂肪細胞は壊死し、マクロファージという免疫細胞によって掃除され、体内に吸収されていきます。これが医学的な意味での「吸収」です。
すべての細胞が生き残るのは難しく、ある程度の吸収は生理現象として避けられません。しかし、生き残った細胞は周囲の組織と一体化し、その後は自分の体の一部として半永久的に留まります。
そのため「すぐにすべてが吸収される」というのは誤りであり、「一部は吸収されるが、残りは定着して長期間維持される」というのが正しい認識です。
注入技術と使用する脂肪の質が結果に与える影響
「吸収される」度合いは、医師の技術や使用する脂肪の処理方法によっても大きく変わります。
不純物(血液や老化細胞、死活細胞)が多く含まれたままの脂肪を注入すると、炎症が強く起こり、健康な脂肪細胞まで道連れにして吸収されてしまうリスクが高まります。
また、一度に大量の脂肪を一箇所に塊として注入すると、中心部の細胞に酸素が届かず壊死してしまいます(これをオイルシストと言います)。
逆に、不純物を極限まで取り除いた良質な脂肪(コンデンスリッチファットなど)を使用し、微量ずつ分散して注入する高度な技術を用いれば、脂肪細胞一つひとつが周囲の組織と接触しやすくなり、血管新生がスムーズに行われます。
その結果、吸収される量を最小限に抑え、高い定着率を実現することが可能になります。
実際の定着率はどれくらい?個人差を生む体質と生活習慣の真実
脂肪注入における「定着率」とは、注入した脂肪の量に対して、最終的に組織として残った量の割合を指します。
この定着率は一律ではなく、患者様の体質や生活習慣、年齢によっても変動します。ご自身の条件と照らし合わせながら、現実的な期待値を持ちましょう。
一般的な定着率の目安と判定までの期間
従来の一般的な脂肪注入法では、定着率は30%〜50%程度と言われていました。
しかし、現在主流となっている不純物を除去する精製技術(遠心分離やフィルター処理など)を用いた場合、定着率は60%〜80%程度まで向上しています。例えば、10ccの脂肪を注入した場合、最終的に6cc〜8cc程度が残る計算になります。
定着率が確定するのは、術後3ヶ月から6ヶ月経過した時点です。この時点で残っている脂肪は、自分の組織として完全に生着しているため、それ以降に急激になくなることはありません。
ただし、加齢による自然なボリューム減少や、過度なダイエットによる全身の脂肪減少に伴って、額の脂肪もサイズダウンすることはあり得ます。
体質による定着率の違いはあるか
一般的に、もともと皮下脂肪が極端に少ない「痩せ型」の方や、代謝が非常に活発な方は、定着率がやや低くなる傾向があります。
これは、移植床(脂肪を受け入れる額の組織)の血流や余裕が少ないことや、移植された脂肪がエネルギーとして消費されやすいことが関係していると考えられます。
一方、ある程度ふっくらとした体型の方や、皮膚に伸縮性がある方は、移植された脂肪にかかる内圧が低く、血流も確保されやすいため、比較的定着しやすい傾向にあります。
とはいえ、これはあくまで傾向であり、痩せ型の方でも適切な注入量と方法を守れば、十分に満足のいく結果を得ることは可能です。
定着率を左右する主な要因
- 基礎代謝の高さ
代謝が良いアスリートなどは、脂肪が燃焼されやすく定着率が下がる可能性があります。 - 喫煙習慣の有無
タバコは毛細血管を収縮させ、血流を悪くするため、定着率を著しく低下させる最大の敵です。 - 額の皮膚の緊張度
皮膚が硬く伸びにくい場合、注入した脂肪への圧力が高まり、定着を妨げる原因になります。 - 採取部位の状態
太ももなど、線維質が少なく良質な脂肪が取れる部位から採取した方が、定着に有利に働きます。
年齢が脂肪細胞の定着に与える影響
年齢も定着率に関わる一つの要素です。若い方の脂肪細胞は活性が高く、移植後の環境適応能力が高いと考えられます。
また、皮膚の伸展性も良いため、注入された脂肪に対する圧迫ストレスが少ないという利点があります。
年齢を重ねると、採取する脂肪細胞自体の活力が低下していたり、額の皮膚が硬く委縮していたりするため、定着に不利な条件が重なる場合があります。
しかし、再生医療の分野では、脂肪幹細胞を添加する方法など、年齢によるハンディキャップを補う技術も進歩しています。
高齢だからといって脂肪注入ができないわけではなく、適切なプランニングを行うと、自然な若返り効果を得られます。
定着率を最大化するために手術中に医師が実践すべき手技
脂肪の定着率は、患者様の体質だけでなく、執刀医の技術と判断に大きく依存します。単に脂肪を入れるだけでなく、「いかに細胞を生かしたまま移植するか」という点に注力する必要があります。
脂肪採取時の愛護的な操作と純化プロセス
良質な脂肪を確保するためには、採取の段階から細心の注意が必要です。高い吸引圧をかけて乱暴に脂肪を吸い出すと、脂肪細胞の膜が傷つき、移植してもすぐに死滅してしまいます。
医師は、適切な太さのカニューレ(吸引管)を使用し、愛護的に(優しく)脂肪を採取します。
採取された脂肪には、麻酔液、血液、死んだ細胞、老化細胞などの不純物が混ざっています。これらをそのまま注入すると、しこりや石灰化の原因になるだけでなく、健康な脂肪の定着を阻害します。
そのため、遠心分離機にかけたり、特殊なフィルターを通したりして、不純物を徹底的に除去し、濃縮された新鮮な脂肪(コンデンスリッチファットなど)を作成します。この「純化」の工程が、定着率向上の鍵を握っています。
主な脂肪加工方法の違い
| 加工方法 | 特徴と仕組み | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 通常の遠心分離 | 採取した脂肪を遠心分離機にかけ、水分と脂肪を分離する基本的な方法。 | 水分を減らすことはできるが、不純物や老化細胞も混在するため、定着率は標準的。 |
| CRF(コンデンスリッチ) | 特殊なフィルター(ウェイト)を用いて遠心分離を行い、不純物と老化細胞を圧着して除去する。 | 健全な脂肪細胞のみを濃縮するため、定着率が高く、しこりのリスクも低い。 |
| ピュアグラフト | 二層のフィルターを通して、脂肪細胞を壊さずに不純物のみを濾過する方法。 | 遠心分離の圧力をかけないため細胞へのダメージが少なく、高い純度で脂肪を精製できる。 |
多層注入法による血流確保と凹凸防止
額は皮膚が薄く、すぐ下に骨がある部位です。ここに一度に大量の脂肪を注入すると、塊となって中心部が壊死したり、表面がボコボコしたりする原因になります。
これを防ぐために行われるのが「多層注入法(マルチレイヤーインジェクション)」です。
この手法では、骨膜上、筋肉内、皮下といった異なる深さの層に、少量ずつ細かく脂肪を分散させて注入します。これにより、移植された脂肪細胞一つひとつが周囲の組織と接触する面積が増え、酸素や栄養を受け取りやすくなります。
結果として、脂肪の生存率が上がり、表面も滑らかで自然な仕上がりになります。熟練した医師は、1ccの脂肪を数十回から百回以上に分けて繊細に注入していきます。
過剰注入を避ける適量判断の重要性
「吸収される分を見越して、多めに入れてほしい」と希望される患者様は少なくありません。しかし、過度な注入(オーバーコレクション)は逆効果になる場合があります。
皮膚の許容量を超えて無理に脂肪を詰め込むと、組織内の圧力が上昇し、血流が途絶えて脂肪壊死(オイルシスト)を引き起こすリスクが高まるからです。
また、額が不自然に突出しすぎると、「コブダイ」のような違和感のある見た目になってしまいます。医師は、患者様の皮膚の伸び具合や骨格を見極め、生理的に許容される範囲内での「適量」を判断します。
安全かつ美しく仕上げるためには、一度で無理に完成させようとせず、必要であれば2回に分けるという判断も、定着率と美しさを守るためには重要です。
術後の過ごし方で定着率が変わる?やってはいけないNG行動
手術がどれほど成功しても、術後の過ごし方次第で定着率は大きく変わってしまいます。特に移植直後の脂肪細胞は非常にデリケートで、外部からの刺激や血流の変化に敏感です。
せっかく注入した脂肪を無駄にしないために、日常生活で注意すべきポイントと、避けるべきNG行動について詳しく解説します。
患部を冷やしすぎの弊害
美容整形の術後は「冷やす(クーリング)」が腫れ対策として推奨されるのが一般的です。しかし、脂肪注入に関しては注意が必要です。
過度に冷やしすぎると、血管が収縮して血流が悪くなり、移植された脂肪細胞への酸素供給が滞ってしまいます。
脂肪細胞が定着するためには、血管新生による血流の確保が必要です。冷やしすぎは、この生命線を絶つことになりかねません。
腫れが強い場合のクーリングは、氷などで直接キンキンに冷やすのではなく、濡れタオルや冷えピタ程度で優しく熱感を鎮める程度に留めましょう。
また、長時間の冷却は避け、術後3日目以降は冷やすのをやめ、自然な回復を待つのが賢明です。
圧迫やマッサージが定着を阻害する理由
額への物理的な圧迫は、定着していない脂肪を押し潰し、位置をずらしてしまう危険な行為です。術後1ヶ月程度は、きつい帽子の着用や、額を強く圧迫するようなヘッドマッサージ、洗顔時の強い摩擦は避けてください。
「なじませよう」として自己判断でマッサージを行うのも厳禁です。せっかく伸びてきた新生血管を断裂させ、脂肪細胞を壊死させる原因になります。
注入部位は「触らない」が鉄則です。どうしても触れる必要がある場合(洗顔やメイクなど)は、泡で優しく洗う、パフを優しく当てるなど、摩擦と圧力を極力かけないように意識してください。
行動が脂肪に与える影響まとめ
| 行動カテゴリー | 具体的なNG行動 | 脂肪細胞への悪影響 |
|---|---|---|
| 温度管理 | 保冷剤で長時間冷やす、サウナや熱いお風呂での長湯 | 冷却は血流不全による壊死、過度の温めは代謝亢進による吸収促進を招く。 |
| 物理的刺激 | 帽子の着用、うつ伏せ寝、マッサージ、美顔器の使用 | 圧迫により脂肪細胞が押し潰され、形状が崩れたり血管新生が阻害されたりする。 |
| 生活習慣 | 喫煙、激しい運動、摂取カロリー制限 | 酸素・栄養不足により細胞が死滅する。運動による代謝アップも脂肪燃焼につながる。 |
過度なダイエットや喫煙が脂肪細胞に与える悪影響
術後早期に過度なダイエットを行い、体重を落としてしまうと、体はエネルギー不足を補うために、移植されたばかりの脂肪も燃焼させてしまいます。
定着期間中(術後3ヶ月程度)は、体重を維持するか、少し増やすくらいの気持ちで栄養をしっかり摂ることが定着率アップにつながります。
また、喫煙は脂肪注入の天敵です。タバコに含まれるニコチンは強力な血管収縮作用を持ち、毛細血管の血流を阻害します。
酸素不足になった脂肪細胞は定着できずに壊死し、吸収されるか、石灰化してしこりになるリスクが跳ね上がります。高い定着率と綺麗な仕上がりを望むのであれば、術前後は禁煙することを強く推奨します。
2回目の注入は本当に必要か?判断するタイミングとメリット
脂肪注入を検討する際、「1回で終わるのか、2回必要なのか」は予算やダウンタイムを考える上で重要な問題です。
結論から言えば、1回で満足される方も多いですが、より理想的なラインやボリュームを追求するために2回目を行うのは非常に理にかなった選択肢です。
1回目で満足できるケースと物足りないケース
もともとの額の凹みが軽度で、「自然に丸くしたい」という要望であれば、1回の注入で十分満足できる結果が得られるケースが多いです。
特にコンデンスリッチファットなどの良質な脂肪を用いれば、1回でもかなりの変化を実感できます。
一方で、「おでこを欧米人のようにしっかり出したい」「眉骨の突出が強く、段差を完全に埋めたい」といった大きな変化を求める場合、1回の注入では限界があります。
無理に1回で大量に注入しようとすると、前述の通り定着率の低下やしこりのリスクが高まるため、安全面を考慮して「最初から2回に分ける計画」を立てるケースもあります。
2回目を行うのに適した時期はいつか
もし2回目の注入を行う場合、1回目の手術から少なくとも3ヶ月、できれば6ヶ月以上の期間を空けるのが望ましいです。これは、1回目に注入した脂肪が完全に定着し、組織の状態が安定するのを待つためです。
まだ腫れや吸収の過程にある時期に追加注入を行っても、最終的な仕上がりの予測がつかず、凸凹になったり入れすぎたりする原因になります。
半年ほど経過すれば、額の皮膚も柔らかさを取り戻し、新たな脂肪を受け入れるスペースと血流の準備が整います。焦らず、土台がしっかり完成してから「仕上げ」を行うことが成功の秘訣です。
重ねて注入すると得られる持続性と完成度
2回目の注入は、単にボリュームを足すだけではありません。1回目の定着によってできた「脂肪の土台」の上に、さらに脂肪を重ねると、より立体的で美しい曲線をデザインできます。
また、1回目でわずかに吸収されて気になっていた部分の微調整も可能です。
さらに、一度定着した脂肪組織は血流が豊富なため、2回目に注入した脂肪は1回目よりも定着率が良くなる傾向があります。
「ミルフィーユ」のように層を重ねるよ、皮膚に過度な負担をかけずに、陶器のように滑らかで、かつ長期的に安定した額を手に入れられます。
2回目は「修正」ではなく、より高みを目指す「完成へのステップ」と捉えると良いでしょう。
2回目注入を行う具体的なメリット
- デザインの微調整が可能
1回目の定着具合を見て、左右差や細かな凹みを修正し、完璧なラインに近づけられます。 - 安全にボリュームアップ
一度に大量に入れるリスクを回避し、皮膚への負担を最小限に抑えながら高さを出せます。 - 定着率の向上
1回目で造成された血管網を利用できるため、2回目の脂肪はより生存しやすい環境になります。 - ダウンタイムの軽減
1回目よりも注入量が少なく済む場合が多く、腫れや内出血が軽く済む傾向があります。
ヒアルロン酸注入と比較した際のコストパフォーマンスと持続性
額を丸くする方法として、脂肪注入と並んで人気なのがヒアルロン酸注入です。手軽さではヒアルロン酸が勝りますが、長期的な視点で見ると脂肪注入には大きなアドバンテージがあります。
繰り返しのメンテナンス頻度の違い
ヒアルロン酸は製剤にもよりますが、半年から1年半程度で徐々に体内に吸収されてなくなります。そのため、丸い額を維持するには、定期的にクリニックに通い、追加注入を繰り返す必要があります。
終わりが見えないメンテナンスは、精神的にも負担になる場合があります。
対して脂肪注入は、定着してしまえば自分の組織として一生残ります。
手術というハードルはありますが、一度(あるいは二度)の施術で完了するため、その後のメンテナンス通院の必要がありません。「いつかなくなる」という不安から解放されるのは、脂肪注入の大きな魅力です。
長期的な費用対効果のシミュレーション
初期費用(1回あたりの施術代)だけで見れば、脂肪注入はヒアルロン酸の数倍の価格になるのが一般的です。しかし、ヒアルロン酸を5年、10年と打ち続けた場合の総額を計算すると、実は脂肪注入の方が安く済むケースが多くあります。
また、ヒアルロン酸を繰り返し注入し続けると、製剤が横に広がって額がブヨブヨしたり、不自然に太くなったりするリスクもあります。
長期的な美しさと経済性を天秤にかけたとき、脂肪注入は「一生モノの額」を手に入れるための投資として、十分にコストパフォーマンスが高いと言えます。
触り心地や見た目の自然さにおける優位性
額は表情によってよく動く部位です。脂肪注入の最大の利点は、その「質感」にあります。
定着した脂肪は柔らかく、温かみがあり、触っても骨のような硬さや人工的な異物感がありません。表情を作った時も筋肉の動きに合わせて自然に動くため、整形したことがバレにくいという特徴があります。
ヒアルロン酸も高品質なものは自然ですが、大量に入れると特有の硬さが出たり、光の当たり方によって青白く透けて見えたりする(チンダル現象)ときがあります。
また、額の皮膚が薄い人は製剤の輪郭が浮き出る場合もあります。本当の意味での「ナチュラルさ」を追求するなら、自己組織である脂肪に軍配が上がります。
脂肪注入とヒアルロン酸の比較
| 比較項目 | 脂肪注入 | ヒアルロン酸注入 |
|---|---|---|
| 持続期間 | 定着すれば半永久的 | 半年〜2年程度(徐々に減る) |
| アレルギー | 自分の組織なのでなし | 稀にアレルギー反応が起こる |
| 感触・見た目 | 非常に柔らかく自然。皮膚との馴染みが良い。 | 量が多いと硬さやブヨブヨ感が出ることがある。 |
リスクとダウンタイムを正しく理解し不安を解消
メリットの多い脂肪注入ですが、外科手術である以上、リスクやダウンタイムはゼロではありません。これらを事前に正しく理解し、対策を知っておくと、術後の不安を大幅に軽減できます。
額特有の「重力による腫れの移動」
額への脂肪注入後、もっとも驚かれるのが「目の周りの腫れ」です。額に入れた麻酔液や炎症による水分は、重力に従って下へと移動します。
そのため、術後3日目あたりをピークに、まぶたや目の下がパンパンに腫れたり、内出血で紫色になったりする場合があります。「額の手術をしたのに目が開かない」と心配になるかもしれませんが、これは正常な経過です。
額自体の腫れが引いていくサインでもあります。この腫れは1週間から10日程度で自然に引いていきます。
大切な予定の直前などは避け、ダウンタイム用のメガネや帽子を用意しておくと、精神的な余裕を持って過ごせるでしょう。
しこり(石灰化)ができるリスクとその対策
注入した脂肪が定着せずに壊死し、体内で吸収しきれなかった場合に、硬い塊となって残るときがあります。これが「しこり(石灰化・オイルシスト)」です。
額は皮膚が薄いため、しこりができると手で触れて分かったり、見た目に凹凸ができたりする可能性があります。これを防ぐための最大の対策は、前述した「良質な脂肪(不純物の除去)」「適量の注入」「分散注入」です。
これらは医師の技術領域ですが、患者様側でも「喫煙しない」「患部を圧迫しない」といったケアを徹底すると、リスクを最小限に抑えられます。
万が一しこりが気になった場合でも、ステロイド注射や穿刺吸引などで治療可能なケースがほとんどです。
感染症や内出血への備え
稀ではありますが、傷口から細菌が入り感染を起こすリスクがあります。これを防ぐために、処方された抗生物質は必ず飲み切るようにしてください。
また、術後当日の洗髪を控えるなど、医師の指示に従って清潔を保つことが重要です。内出血は個人差がありますが、黄色く変色して消えるまでに2週間程度かかる場合があります。
コンシーラーで隠せる程度になるのが早いため、社会復帰は比較的早いですが、完全に色が消えるまでは激しい運動や長湯など、血流を良くしすぎる行為は控えめにしましょう。
ダウンタイムの経過目安
| 経過日数 | 主な症状 | 生活のアドバイス |
|---|---|---|
| 手術当日〜3日目 | 腫れのピーク。まぶたまで腫れが降りてくることがある。痛みがある場合は鎮痛剤を使用。 | 頭を高くして寝る。長時間の入浴やアルコールは控える。 |
| 4日目〜1週間 | 徐々に腫れが引き始める。内出血が黄色くなってくる。抜糸が行われる(必要な場合)。 | メイクで内出血をカバー可能。無理のない範囲で日常活動に戻る。 |
| 2週間〜1ヶ月 | 大きな腫れは引き、自然な見た目に近づく。ツッパリ感や違和感が残ることもある。 | まだ強く触ったり圧迫したりしない。マッサージは厳禁。 |
よくある質問
- 額の脂肪注入の痛みはどれくらいですか?
-
手術中は静脈麻酔などを使用するため、眠っている間に終わり痛みを感じることはほとんどありません。
術後は、脂肪を採取した部位(太ももなど)に筋肉痛のような痛みが出ますが、痛み止めでコントロールできる範囲です。
額自体の痛みは比較的軽く、突っ張るような違和感を感じる方が多いですが、激痛を訴える方は稀です。
- 額の脂肪注入後、帽子やメイクはいつから可能ですか?
-
メイクは、針穴(傷口)を避ければ翌日から可能な場合が多いですが、クリニックの方針によります。
帽子に関しては、額を締め付けるタイプのニット帽やキャップは、定着に悪影響を与えるため術後1ヶ月程度は控えてください。
どうしても必要な場合は、額に触れないふんわりとした帽子を選ぶようにしましょう。
- 額の脂肪注入をした後、将来的にたるむことはありますか?
-
注入した脂肪の重みで額がたるむことは、適切な量を注入している限りほとんどありません。
むしろ、加齢とともに額の骨が萎縮し、皮膚が余ってシワやたるみが生じますが、脂肪注入でボリュームを補うと、皮膚が内側からパンと張り、シワやたるみを予防する効果が期待できます。
- 額の脂肪注入の仕上がりが気に入らない場合、修正はできますか?
-
万が一ボリュームが足りない場合は、2回目の注入で追加・調整が可能です。
逆に入れすぎてしまった場合は、脂肪溶解注射で減らしたり、小さな切開から吸引したりすることで修正できますが、一度定着した脂肪を均一に減らすのは難易度が高くなります。
そのため、最初から入れすぎず、控えめに仕上げて様子を見るのが安全です。
参考文献
LV, Qianwen, et al. Volume retention after facial fat grafting and relevant factors: a systematic review and meta-analysis. Aesthetic Plastic Surgery, 2021, 45.2: 506-520.
GORNITSKY, Jordan, et al. A systematic review of the effectiveness and complications of fat grafting in the facial region. JPRAS open, 2019, 19: 87-97.
SCHIRALDI, Luigi, et al. Facial fat grafting (FFG): worth the risk? A systematic review of complications and critical appraisal. Journal of Clinical Medicine, 2022, 11.16: 4708.
YU, Nan-Ze, et al. A systemic review of autologous fat grafting survival rate and related severe complications. Chinese Medical Journal, 2015, 128.09: 1245-1251.
CLAUSER, Luigi C., et al. Structural fat grafting: facial volumetric restoration in complex reconstructive surgery. Journal of Craniofacial Surgery, 2011, 22.5: 1695-1701.
AZOURY, Saïd C., et al. Modern fat grafting techniques to the face and neck. Plastic and Reconstructive Surgery, 2021, 148.4: 620e-633e.
ZHANG, Yuchen, et al. Survival mechanisms and retention strategies in large-volume fat grafting: a comprehensive review and future perspectives. Aesthetic Plastic Surgery, 2024, 48.20: 4178-4193.
FIEDLER, Lukas S.; SALEH, Daniel B.; MUKROWSKY, Alicia. Autologous fat grafting in the face and neck: Multinational trends and knowledge of the safety, applications, and indications considering oncologic risk potential. Laryngoscope Investigative Otolaryngology, 2021, 6.5: 1024-1030.
額・おでこの脂肪注入に戻る


